2014 Fiscal Year Research-status Report
応急仮設住宅団地における有効なキャッシュ・フォー・ワークの研究
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26750116
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Research Institution | Iwate Prefectural University |
Principal Investigator |
後藤 裕介 岩手県立大学, ソフトウェア情報学部, 准教授 (40454037)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 社会シミュレーション / 震災復興 / キャッシュ・フォー・ワーク / 意思決定支援 / エージェントベース・モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
応急仮設住宅団地における有効なキャッシュ・フォー・ワークのシミュレーション分析の前段階として,当該年度では中程度の解像度をもつシミュレーションモデルの構築とスタイライズドファクトの成立条件の分析を行った. 世帯概念を持つ住民の就職・転職活動と企業の採用のプロセスを表現した労働市場モデルを構築した.その上で,被災沿岸自治体のひとつと同様の特徴を持つ仮想都市を各種統計調査データから構成した. このモデルを利用して,キャッシュ・フォー・ワークの実践例から経験的に言われているスタイライズドファクトがどのような条件であれば想定する都市でも成立するのかをシミュレーション分析を実施した.この結果から,(1)対象とする被災沿岸地域においてもキャッシュ・フォー・ワークにより支払われる賃金が相対的に高いと地域民間事業者による雇用を阻害し,賃金を相対的に低く設定するとキャッシュ・フォー・ワークの事業から民間事業者への転職者が増えること,(2)キャッシュ・フォー・ワークの実施期間が相対的に短期間であると一時的な雇用の確保は実現できるが,次の就労につながるスキルが身につかないまま事業が終了することで再就職が難しいこと,(3)被災地域で雇用がある事業で必要となるスキルをキャッシュ・フォー・ワークの中で習得可能にすることで効果的に転職が期待できることが確認できた. 以上の成果から,スタイライズドファクトの成立条件について理解を深めることができたとともに,様々な状況・目標設定において,個別自治体の意思決定支援に資するシミュレーションモデルの基礎を固めることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
モデル構築にあたって,必要なデータは現地での聴き取り調査が必要であると当初は考えていたが,既に公開されている統計調査結果から相当程度推定可能であることがわかり,モデル構築に時間を割り当てることができ,結果的にシミュレーション分析を実施することができた. これらの成果は学会・研究会で発表を行い,有効なフィードバックを得て,次年度以降の研究の参考とすることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,被災沿岸地域のひとつを対象としたシミュレーションに留まっていた一方で,地域ごとに世帯や年齢構成の特徴や産業構成には異なりがあり,これらの要因の政策効果への影響があると考えられる. 次年度はこれらの要因を考慮したシミュレーション分析を行い,キャッシュ・フォー・ワークの効果に関する理解を深めることを目的とする. 統計データからモデルパラメータの推定には技術的困難が伴うことが予想されるが,適切な研究者と共同で検討を行う.また,シミュレーション実験では計算機資源が研究推進の制約になることも考えられるため,新規での購入も検討している.
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Causes of Carryover |
現地での聞き取り調査を行う必要がなくなり,インタビューやアンケートの分析のための謝金が不要となったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後もインタビューやアンケートが必要になることが想定されるため,次年度に繰り越して私用する.
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