2015 Fiscal Year Research-status Report
生態系と経済システムの非線型ダイナミクスを捉えた政策モデリング手法の確立と適用
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26750120
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
上原 拓郎 立命館大学, 政策科学部, 准教授 (60384757)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | システムダイナミクス / 産業連関表 / 生態経済モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度構築した,経済システムを地域産業連関表(地域IO)で捉え,生態系をシステムダイナミクス(SD)で捉え,更に両者を同期させたIO/SD生態経済モデルの検査・検証,改善,そして試験的なシミュレーション分析を行った.昨年度に引き続き,フランスセーヌ河口域の生態系を研究対象とした. 検査(verification)はモデルの設計に誤りがないかを確認する作業であり,検証(validation)はモデルのアウトプットに誤りがないかを確認する作業である.確認はまず地域IO,SDそれぞれの構造及びアウトプットについて行い,その後,IO/SDを同期させた状態での構造及びアウトプットについて行い,適宜修正を実施した. モデルの改善については第1に,地域IOを最新の2012年のデータへ更新するとともに精緻化を行うことで,より政策的に意義のあるIO/SD生態経済モデルとした.研究対象地域のIOは整備されていないことから,これまでと同様に,EUROSTATが提供するフランスのIOをJackson (1998), Lahr (2001) 及び McDonald (2005) が用いた手法を適用して構築した.第2に計量経済モデルを導入することで静的な地域IOに動学の要素を加えた.具体的には,賃金,雇用状況,企業利潤,税金,そして企業投資を従属変数とした計量経済モデルを作成し,従来の静的IOでは一定と仮定されている要素の動学化を実施した.これにより,静的IOの課題として指摘されている非現実的な仮定を緩和することができる.第3に,構築したモデルを用い,生態系回復策のあり方について,地域総生産額,雇用,そして生態系への影響の観点を踏まえた試験的なシミュレーションを実施した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は計画当初予定していなかった,地域IOの最新版への更新,及び静的IOを補完するための計量経済モデルの組み込みを行った.いずれも,生態経済モデルを大きく改善し,より良い最終的な研究成果につながる行程であったと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画に加え,静的IOを補完する計量経済モデルの理論的な検証を実施する.静的IOには様々な仮定があり,それらは計量経済モデルを組み合わせることで緩和することができ,また,そうしたモデルは,IOECモデルとも言われる(West, 2002).ただし,計量経済モデルを組み合わせることで静的IOの理論的整合性を損なうことは避けなければならないため,その点を慎重に検討する必要がある.特に本研究ではSDとの同期も行っており,SDとの整合性についても慎重に検討を行う必要がある.
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Causes of Carryover |
共同研究者のDr.Cordierとパリで共同研究を実施する予定であったが,パリ市内でテロ事件が発生したため,出張を見送った.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
出張中止により進められなかった研究について,今年度,当初計画よりも出張を増やすことで進める予定である.
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Research Products
(5 results)