2014 Fiscal Year Research-status Report
ドライバの危険予測能力を向上させる運転支援システムの設計要件と支援効果の解明
Project/Area Number |
26750124
|
Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
竹本 雅憲 成蹊大学, 理工学部, 講師 (70437515)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | ヒューマンファクター / 自動車 / 運転行動 / 運転支援 / 事故防止 / インタフェース / ヘッドアップディスプレイ / シミュレータ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、「即時支援システムにおける誘導目標の設定」、「即時支援システムの提示方式の具体化」および「即時支援システムの評価実験と設計要件の解明」を計画した。 はじめに、先行研究で得られた教習所指導員の規範確認行動を基準に、誘導目標となる確認行動を設定した。予備的検討において、指導員の規範確認行動を誘導目標とした場合、即時支援システムでの情報提示が煩雑になると考えられた。このため、計画を変更し、代表的な4種類のヒヤリハット場面をシミュレータで再現した実験を先立って行った。指導員と事故やヒヤリハットを起こした実験参加者の確認行動を比較することで、安全性に寄与する確認行動を特定した。指導員の3段階での規範確認行動のうち、特に2段階目の確認行動が重要であることが分かり、4方向から接近する自転車を想定して1回ずつ確認を行う誘導目標を設定した。 次に、即時支援システムの提示方式を具体化した。ヘッドアップディスプレイを用いてフロントガラスに支援情報を提示し、確認行動で視線を向けるべき方向とタイミングを報せるシステムを設計した。提示情報は輪郭部分をぼかし、透過性を持たせて提示情報の背景環境が視認できるような視覚アンビエント方式に設計した。 最後に、即時支援システムの評価実験を行った。走行速度に起因する提示情報の表示時間と、参加者が提示情報の方向に視線を向けた割合(視線誘導率とする)との間に相関が見られた。また、情報提示時の参加者の視線方向と情報提示方向との角度が、視線誘導率に影響することが分かった。提示情報の表示色としては橙色が好ましく、即時支援システムなしの場合に比べて視線誘導率が最も増加した。ただし、直進側左側歩道への巻き込み確認における顔向きの角度が十分でないこと、ドライバの視線方向と情報提示方向の角度が大きくなる直進側右側歩道に対する視線誘導率が十分でないことが課題として残った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の研究達成度が遅れた原因として、「誘導目標の再検討」、「新規シミュレータソフトの導入」が挙げられる。 はじめに、「誘導目標の再検討」について説明する。提案する危険予測運転支援システムでドライバにとらせるべき確認行動の誘導目標は、実車両実験により記録および分析した教習所指導員の規範確認行動に設定する計画であった。しかし、予備的検討において、運転時に情報を提示してドライバの確認行動を誘導する即時支援システムでは、教習所指導員の規範確認行動と等価な情報の提示は煩雑になりすぎて支援効果が見込めないと考えた。そこで、「9.研究実績の概要」の項で示した通り、いくつかの代表的なヒヤリハット場面をシミュレータで再現して、教習所指導員の規範確認行動の中で安全性に特に寄与する確認行動を特定する実験を新たに行うように研究計画を変更した。 次に、「新規シミュレータソフトの導入」について説明する。本研究課題で対象とするシステムは危険予測に焦点を置くため、運転映像の現実感の高さが必要になる。このため、特にグラフィック性能を重視し、また実験時の環境設定の自由度も高いシミュレータソフトを今年度から導入した。本ソフトにより実験設計の自由度が非常に高くなったが、その反面、これまでのソフトとは仕様が大きく異なり、ソフト使用方法の習得に時間を費やすこととなった。このため、計画時の見込みよりも、実験準備等の時間を多く割くことになった。 以上の理由により、今年度は研究達成度にやや遅れが見られたが、誘導目標を再検討したことにより、提案するシステムの効果評価およびシステムの設計要件の解明という点において、特に重要な項目に注力して成果を示せると考えられる。また、今年度におけるシミュレータソフトの使用方法の習熟により、次年度の実験の進捗を早められると期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
「9.研究実績の概要」の項で示した通り、今年度に考案した即時支援システムには視線誘導効果について課題が残った。よって、以下の通りに次年度の計画を修正する。すなわち、次年度前半は、今年度の課題を踏まえて即時支援システムの設計要件の解明に向けた実験を引き続き行い、事後支援システムの設計要件の解明に向けた予備的な実験と並行して行う。そして、次年度後半に両者を統合して、総合的な危険予測運転支援システムの評価実験と設計要件の検討を行う。 また、次年度の研究の推進方策として、ドライビングシミュレータを用いた実験について、複数の実験の準備および実施を並行して行えるように、簡易シミュレータを導入する。詳細は「次年度使用額が生じた理由と使用計画」の項に後述する。 即時支援システムの設計については、ドライバの視線方向と提示情報の表示方向との角度が大きい場合に課題が残る。また、システムの導入を現実的に考えると、支援情報の提示範囲はフロントガラスに限定したい。このため、顔を大きくむけてフロントガラス外の死角の目視確認を行うような視線誘導が難しい。以上の課題を解決するため、次年度は動的に提示する支援情報のデザインに取り組む。また、減速操作も含めて、ドライバの運転の不安全度に応じた提示情報の設計も視野に入れる。 事後支援システムでは、即時支援システムでは誘導効果の低い項目について、適切な確認行動のとり方やその根拠をドライバに示すような情報の提示方式に取り組む。今年度前半の実験の結果から、事故やヒヤリハットを起こす一般ドライバの不安全な確認行動の特徴が得られている。よって、この特徴を踏まえてドライバに提示する情報を設計すれば、支援効果が期待できると考える。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、当初の計画より実験の進度が遅れたため、実験参加者への謝金としての使用額が計画と異なった。また、今年度は事後支援システムを含めて、インタフェース等の機器の導入を検討していたが、着手できなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
上述した項目に関しては、いずれも次年度に実験等を実施するため、次年度に研究費を使用する。また、「今後の推進方策」の項にも記述した通り、研究の推進方策として簡易シミュレータを導入するため、それらの機器設備の購入について研究費を優先的に使用する計画である。
|
Research Products
(2 results)