2014 Fiscal Year Research-status Report
海底強震観測データを用いた南海トラフ周辺の長周期地震動増幅に関する研究
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26750132
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
中村 武史 独立行政法人海洋研究開発機構, 地震津波海域観測研究開発センター, 技術研究員 (40435847)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 波動伝播 / 地盤 / 増幅 / 海底観測 / DONET / 差分法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度では、陸域で発生したMw 5.8の中規模地震について、陸上と海底観測点の振幅値、地震動継続時間の比較を主要な周期帯ごとに行った。その結果、4秒以上の帯域において、海底観測点では最大振幅値が陸上観測点と比べて数倍大きい値を示すことが分かった。一方、短周期帯では振幅値に大きな違いを見出すことはできなかった。震動の継続時間については、陸上では数10 秒程度の継続時間であったが、海底では減衰が小さく、100秒以上にわたって継続していることが分かった。 次に、付加体や海洋性プレートの構造モデルを取り入れた地震波伝播シミュレーションを行い、陸上と海底観測点の地震波形の再現を行った。シミュレーション結果より、地震動長周期成分が増幅する場所について、付加体が厚くなり、低速度層となっている海域と良く対応していることが分かった。シミュレーションから得られたスナップショットでは、表面波が付加体へ入射後、振幅の増幅や波群の伝播速度が低下する様子を確認でき、陸上の堆積平野部でこれまで多く観測された堆積層表面波と同様の伝播特性を示すことが分かった。 以上の観測データ解析及びシミュレーション結果より、海域における地震動長周期成分の増幅や伝播の特徴、増幅過程について示すことができた。また、観測波形とシミュレーション波形の比較から、現状の海域地下構造モデルのS波速度について、現実の構造と乖離している可能性があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次年度に予定していたシミュレーションを前倒して実施し、海域における地震動長周期成分の増幅や伝播の特徴、増幅過程について示すことができた。この点については当初計画より研究を進めることができたと言える。しかし、取り組んだのは中規模地震1つのみについてであり、複数の地震についての解析はまだ終わっていない。この点については当初計画より研究が遅れており、次年度に取り組む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
複数の地震のデータから、増幅についての方位や深さの依存性を調べる予定である。また、観測波形とシミュレーション波形の比較から構造モデルのチューニングを行い、現実の構造と乖離している点について改善の可能性を検証する。
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Causes of Carryover |
子の出生のため、年度後半における国内学会・海外学会への参加・発表を見送った。また、研究成果をまとめることに時間がかかり、今年度中の論文投稿ができず、旅費や学会参加費、論文に関する費用に未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、今年度参加できなかった複数の国内学会・海外学会への参加・発表及び論文投稿にかかる経費に充てる。
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