2015 Fiscal Year Research-status Report
弾性波を用いた室内実験による地すべり発生メカニズムの理解とモニタリング手法の確立
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26750135
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
土井 一生 京都大学, 防災研究所, 助教 (00572976)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 地盤災害 / 地すべり / 弾性波モニタリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、引き続き砂層地盤の作成、および、弾性波の透過実験をおこなった。 昨年度作成した実験水槽に空中落下法によって砂を供給し、締まった均質な砂層を作成した。センサーとして、加速度計と間隙水圧計(正圧用、負圧用)を埋設した。あわせて、間隙水圧計の較正作業もおこない、計器の挙動を把握した。また、水位を測るため、潜望鏡や側面からの観察などの試行錯誤をおこない、最終的に2本の導線を埋設しそれらの間の抵抗値を計るシステムを開発した。さらに、間隙水圧の上昇を再現するために不透水層を実現する方法についても試行を進めた。 弾性波計測は、飽和領域、不飽和領域、乾燥領域をそれぞれ伝播する弾性波の特性を測るため、まずは水平地盤を用いて行った。砂層中に埋められた加振器によって弾性波を発生させ、地表および浅部地下に設置された加速度センサーによって、振動の高周波サンプリング連続集録がおこなわれた。水をゆっくりと砂層地盤底部から注入したところ、注入中、弾性波を安定して送信し、センサーで受信できたことが確かめられた。弾性波の走時は、水の注入に伴って徐々に遅くなったが、砂層全域が飽和した時刻前後において早くなる方向に転じた。また、弾性波の振幅については、水の注入に伴って、特に高周波成分で低下することがわかった。これらの実験結果から、砂層中の水分量に応じて弾性波の伝播挙動が変化することが示唆され、弾性波計測を水分モニタリングに活用できることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
弾性波記録の取得が順調に進み、解析をおこなうフェイズに入った。また、水分量の変化に伴う弾性波の変化を記録することもできた。すべりを発生させるための傾いた砂層の作成が重要な課題として残っているが、水平砂層での弾性波の基本的な挙動を抑えておくことが、斜面での結果の解釈に有効であり、その意味でも順調であると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の実験の結果、砂層内部を数波長以上かけて伝播した高周波の透過波の信号が大変弱いことがわかった。高周波の信号は局所的な砂層内部の変化を捉えている可能性があり、弾性波からさらなる情報を得ることが可能となる。そのため、発信信号をスイープ信号にし、さらに繰り返し集録、スタックすることによって、信号強度の上昇が期待できないか実験をおこなう。 また、傾いた砂層地盤を作成し、斜面を崩壊させることによって、その前後の弾性波挙動のモニタリングをおこなう。
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Causes of Carryover |
実験による破損数が見込みより少なく、センサーの購入数が減ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
引き続き実験をおこなうため、測定を充実させるためのセンサーの購入や、データ取得のためのハードディスク購入に充てる予定である。
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