2014 Fiscal Year Research-status Report
ものづくり技術・共焦点顕微鏡・画像解析技術を用いた血小板粘着挙動の機序解明
Project/Area Number |
26750150
|
Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡邉 宣夫 芝浦工業大学, システム理工学部, 准教授 (00568644)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 血小板粘着 / コラーゲン繊維 / 繊維配向と粘着特性 / 流れ依存性 / 初期血栓 / バイオレオロジー / 血栓止血 / 画像解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,初期血栓生成の1つのモデルとしての“コラーゲン繊維に対する血小板の粘着挙動”について,コラーゲン繊維と血小板粘着との関係性を明確にする事を目的とした.具体的には,血流方向に対するコラーゲン繊維の角度による血小板粘着量の変化や,血液を流す時間による血小板粘着量の変化がどのように表れるか検証する事を目的としている。血小板とコラーゲンをそれぞれ標識する手法を検討するため、位相差顕微鏡を簡易的に共焦点化する技術を導入した。この技術を利用した2色染色撮影はまだ成功しておらず、更なる検討が必要な状況である。そこで、まずは原点としての通常観察法に戻り、コラーゲン繊維と血小板の両者の関係を定量化する画像解析手法を構築した。血管内皮細胞の損傷部をモデル化したコラーゲンコーティングを施したスライドガラスをフローチャンバーに真空ポンプで圧着させ,コラーゲン上に豚の血液をシリンジポンプを用いて流すことで血小板の粘着挙動を顕微鏡下で観察した.この実験では,血液を送り出す流量を1.555[ml/min](せん断速度259.7[1/s])と設定し,全ての計測をこの流量で行った.また,コラーゲン上に血液を流す時間は4通り用意し,30秒,60秒,90秒,120秒で観察を行った.実験後,血液を流す前のコラーゲン繊維の画像と,血液を流した後の血小板が粘着した状態のコラーゲン繊維の画像を比較することで,血流方向に対するコラーゲン繊維の角度別の血小板粘着成功率[%]画像解析で求めた.その結果、申請者が予想した通り、血流方向に対するコラーゲン繊維の角度が小さい場合には血小板の粘着率が高く,コラーゲン繊維の角度が大きい場合には血小板が粘着しにくいという傾向が12回中7回の実験にて得られた.しかしながら法則性を断定することはまだ判断しかねるため、引き続き、データを蓄積し、現象を見極める必要があると考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,初期血栓生成の1つのモデルとしての“コラーゲン繊維に対する血小板の粘着挙動”について,コラーゲン繊維と血小板粘着との関係性を明確にする事を目的とした。しかしながら、共焦点顕微鏡技術を用いた2色染色撮影を用いるという当初提案した達成方法は、まだ成功していない。その一方で、代替案として用意していた通常撮影法を用いた、コラーゲン繊維と血小板との相互関係を定量化する方法について、実験的に撮影することが可能であったことと、得られた画像に対するプログラム解析手法が構築できた事で当初の目的に向かっておおむね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
2014年度に行った実験の結果から、血流方向に対するコラーゲン繊維の角度が小さい場合には血小板の粘着率が高く,コラーゲン繊維の角度が大きい場合には血小板が粘着しにくい可能性が示された.しかしながらデータの再現性がまだ低い事を考えると、まだその法則性を断定することはまだ判断しかねる。この理由のため、引き続き、データを蓄積し、現象を見極める必要があると判断した。同時に、現在、より良い再現性を有する実験方法を取り入れるため、観察条件としての焦点深度を定量評価も取り組んでいる。血小板粘着挙動のコラーゲン繊維配向と流れとの関係性を明確にするためには、引き続き実験を重ねる必要がある。この実験作業に加えて、これらの結果と解釈をまとめて、学術論文投稿を行う事により、我々の提案する新しい知見に対する研究専門分野の研究者達から見た、我々の研究成果に対する客観的な研究成果の意義、その妥当性を確かめる予定である。
|
Causes of Carryover |
上記の実支出額と予算計画との間には108円の差が生じる結果となった。この差が小さい事からも、研究費の使用は、ほぼ計画通り行われたと判断する。引き続き、計画の通り、予算を大切に使用したい。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
引き続き、データを蓄積する必要があり、その実験遂行に必要なコラーゲン繊維・動物血液・またそれらを用いた血栓形成モニタリング実験に必要な消耗品を購入する必要がある。加えて、学術論文の投稿費や、学術大会における発表による社会への成果発信に要する費用が必要である。
|