2015 Fiscal Year Research-status Report
透析膜におけるC3a・C5a産生の原因となる補体因子を特定する
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26750151
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
井下 博之 順天堂大学, 医学部, その他 (80646117)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 補体活性化 / 血液透析 / 次世代型透析膜 / 生体適合性 |
Outline of Annual Research Achievements |
血液透析(HD)は、血液を体外に循環させ透析膜を通すことで血液を浄化し、末期腎不全患者の生命を維持している。しかしながら、その過程で発生する補体因子C3a・C5aは動脈硬化の一因となり、ひいては心血管死を招くため、その抑制が重要な課題となっている。本研究ではHD中のC3a・C5a産生を引き起こす補体因子の特定を第一の目的とし、さらには補体活性化をゼロにした次世代型透析膜の実現を目指している。パイロットスタディとして透析患者20名の血清中のCH50(補体全体の活性化を示す指標)を計測したところ、健常人としてやや上昇傾向にあることが確認された。
C3a・C5a産生に深く関与する補体成分を特定するため、現在維持透析を施行されている慢性腎不全患者の透析後の透析膜(n=6)を回収し、生理食塩水で十分に洗浄したのち、酢酸を透析膜に通すことにより透析膜に付着した蛋白質の回収に成功した。分光光度計による蛋白定量で確認している。
今年度は透析膜に付着した成分を質量分析を行い、研究成果を学会・雑誌などで発表する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
質量分析や定量測定のための外注検査会社とのやり取りに時間を費やした。また人事異動に伴い病棟業務が急激に増加し研究との両立が難しかった。
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Strategy for Future Research Activity |
溶出した蛋白質を電気泳動で分離したのち、ウェスタンブロットで補体成分14種(C1q、C2、C4、C3a、C5a、MBL、L-ficolin、H-ficolin、MASP1、MASP2、MASP3、sMAP、B因子、D因子)と液体補体制御因子5種(I因子、H因子、C1-inhibitor、Properdin、C4bp)の発現量を比較検討することにより、補体経路活性の動態を把握し、補体成分を特定する。C3a・C5aの産生に関わる補体成分が特定されれば、社会に与える影響は大きく、補体活性化をより一段と軽減した次世代型透析膜の実現が可能となる。これによりHDによって引き起こされるアナフィラキシーの予防もしくは症状の軽減化が期待できる。また、HD患者における動脈硬化進展を抑制し、ひいては心血管病に対する治療によって膨大となっている医療費の軽減にもつながる。
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Causes of Carryover |
H27年度ではウェスタンブロットや質量分析によるタンパク解析を行う予定であったが、サンプル採取に予想外に時間が必要となり施行できなかったため。また人事異動に伴い病棟業務が急激に増加し研究との両立が難しかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度では上記に示したタンパク解析を行う。必要であれば外注して時間短縮する。
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Research Products
(3 results)