2014 Fiscal Year Research-status Report
細胞培養環境で溶解除去可能な温度応答性足場材料の開発
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26750158
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
吉田 裕安材 信州大学, 学術研究院繊維学系, 助教 (40727913)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 感熱応答性高分子 / ヒドロキシブチルキトサン / ゾルーゲル転移 / 可逆性 / 細胞足場材料 / 三次元細胞組織体 / 再生医療 / バイオマテリアル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、再生医療・医学診断等へ応用可能な生体類似の高機能三次元組織の構築のため、「細胞培養環境で溶解除去可能な温度応答性足場材料の開発」を目的としている。そのために、初年度(H26年度)は「冷却により溶解可能な三次元高分子材料の作製法の確立」を目指した。 温度変化に応じて溶解性が制御された三次元材料を得るために、様々な感熱応答性高分子を用いた。市販の感熱応答性高分子(例:ポリN-イソプロピルアクリルアミド、プロピルセルロース等)の溶液は、温度変化により濁度を変化させるものの、高濃度であってもゲルを形成することなく、本研究には不適当であった。また、当初予定していた疎水化ポリγグルタミン酸を有機溶媒に溶かして、凍結乾燥によりスポンジを作製したが、冷却による重量損失は60%程度であり、目的の高分子材料の作製には至らなかった。そこで、既知の高分子ではあるヒドロキシブチルキトサンを合成し、その水溶液のゾルーゲル転移挙動を評価したところ、比較的低い濃度で急速に起こることを見出した。この転移挙動は細胞培養液中でも見られ、細胞存在下であっても可能であることが明らかとなった。 そこで、繊維芽細胞を含むヒドロキシブチルキトサン溶液を4℃に冷却した後、37℃の環境で成型することで、任意の三次元形状を有する細胞とゲルの複合体を作製することに成功した。非常に興味深いことに得られた三次元構造体を4℃に冷却すると、ゲルが溶解し、細胞組織体が得られることを見出した。 以上のことから、冷却により溶解する高分子材料を用いた三次元細胞組織体の構築に関する目途が立ち、次年度は組織化のための種々の条件の決定を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度にして、冷却により溶解する温度応答性高分子足場材料を用いた三次元細胞組織体の作製に成功しているため。次年度は、冷却により溶解する高分子材料の例を増やすこと、ヒドロキシブチルキトサンの加工方法により様々な形態の材料を作製すること、より精密な三次元組織化を目指すことを目的に研究を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒドロキシブチルキトサンの形態に関しては、現在のハイドロゲルのみならず、フィルム・粒子・繊維など様々な加工を試し、冷却により溶解するフィルム・粒子・繊維などの作製を目指す。これにより、このような稀有な高分子材料の応用展開が広がるものと期待される。 精密な細胞の三次元組織化に関しては、ディスペンサーを用いたバイオプリンティングを実施することを計画している。高機能な素材に加えて、精密な機械を利用することで、高度な立体構造を有する三次元細胞組織が構築できると期待している。
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Research Products
(7 results)