2015 Fiscal Year Research-status Report
小胞体ストレスによる細胞アポトーシスを誘導するスマートナノキャリアの構築
Project/Area Number |
26750160
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
秋元 淳 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (80649682)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ドラッグデリバリーシステム / 高分子ミセル / 刺激応答性材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、チオール基と反応する分子の内包した温度応答性高分子ミセルの細胞内導入によりウシ血管内皮細胞の細胞死誘導に成功した。本年度は、細胞死誘導メカニズムを解析するため、細胞種をウシ由来細胞からヒト由来細胞に変更して、温度応答性高分子ミセルを利用した小胞体ストレス誘導実験を開始した。しかし、温度応答性高分子ミセルは、各種ヒト由来がん細胞に対して温度変化に応答した細胞内移行を示さなかった。この原因として、作製した粒子のサイズが影響していることが考えられたので、研究計画に記載した温度応答性高分子ミセルのサイズ制御法に関しての検討をおこなった。温度応答性高分子ミセルは温度変化にともなう温度応答性高分子鎖の疎水性度の上昇により、ミセル間の疎水性相互作用が強まり粒子が会合し凝集体する。この凝集体の制御を、温度応答性高分子鎖長を変化させて制御することを検討したが、粒子間の相互作用を制御することは非常に困難であった。そこで、温度応答性外殻に親水性高分子を導入し粒子間の相互作用を制御する方法を検討した。親水性高分子を温度応答性高分子ミセルに導入したところ、温度付与により形成されるミセル凝集体のサイズは、導入する親水性高分子鎖長および導入量でコントロールできることが明らかとなった。また、これまで温度応答性高分子ミセルは沈殿形成により薬物放出が抑制される場合があったが、この方法を利用すると、ミセルの分散性が向上することより温度変化に伴う薬物放出の追跡も可能となった。28年度は、本ナノ粒子設計を適用して、温度応答性高分子ミセルのがん細胞内導入法を検討する、またミセルに小胞体ストレスを誘導する分子を導入し、ナノ粒子による小胞体ストレス誘導法の確立およびそのメカニズムの解明を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで、ウシ血管内皮細胞を利用して温度応答性高分子ミセルの小胞体ストレス誘導法を検討してきたが、小胞体ストレスの誘導能を評価するにはヒト癌細胞で同様な効果を生起する必要がある。しかし、設計した温度応答性高分子は、ヒトがん細胞に対する細胞内導入率が著しく低く、小胞体ストレスによるアポトーシスを誘導することが出来なかった。そのため、細胞内にナノ粒子を効率的に誘導する方法を確立する必要性が生じ、その分子の合成・評価に時間を要した。このような原因により、当初予定していたヒト癌細胞に対する小胞体ストレス誘導実験を行うことができなった。
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Strategy for Future Research Activity |
親水性高分子の導入により温度応答性高分子ミセルのサイズコントロールに成功したことから、ナノ粒子のサイズががん細胞内移行量に与える影響を検討する。また、本手法はがん細胞特異的にナノ粒子を移行させるシステムにも応用できることから、新規な分子設計によりより効率的にがん細胞内にナノ粒子を導入する方法を検討する。これらの粒子に小胞体ストレス誘導に関与する分子を導入して、がん細胞に作用させ、効率的に細胞死を誘導する方法を検討し、さらにそのメカニズムの解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
細胞を利用した実験の進捗が遅れたことにより、比較的高額な試薬の発注がほとんど生じなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実施3年目は、細胞を利用した実験を中心に行うことから、バイオ関連の試薬を多く利用するため、計画通りに予算を執行する予定である。
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