2016 Fiscal Year Annual Research Report
Development of cell apoptosis inducing smart nanoparticles by endoplasmic reticulum stress
Project/Area Number |
26750160
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
秋元 淳 国立研究開発法人理化学研究所, 伊藤ナノ医工学研究室, 基礎科学特別研究員 (80649682)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ドラッグデリバリーシステム / 小胞体ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
小胞体は、異常なタンパク質が蓄積すると小胞体ストレスとよばれる状態になり、過度の小胞体ストレス下では、アポトーシスを誘導する。本研究では、小胞体ストレスを利用した新しいアポトーシス誘導型のドラッグデリバリーシステムを構築するために、細胞内のタンパク質を変性させる化合物を探索し、ナノ粒子を利用した小胞体ストレス誘導法について検討をおこなった。細胞内のタンパク質を変性させる方法として、細胞内でタンパク質のチオール基と反応することが可能であるクロロメチル基を有する化合物を利用する方法を検討した。ナノ粒子内に種々のクロロメチル化合物を内包し細胞内に導入した。数種類のクロロメチル化合物は、単体では細胞に対する毒性が低く、特にクロロメチルアルカン類は非常に毒性が低いことがわかった。これに対し、クロロメチル化合物をナノ粒子に内包し細胞に作用させると細胞毒性が1000倍以上上昇することがわかった。この原因として、クロロメチル化合物は細胞外から取り込まれると、細胞内のグルタチオンにより無毒化させるが、細胞内に直接送達すると細胞内局所濃度が高まり、グルタチオンの解毒作用が十分に機能せず、細胞内の他の物質と反応したために高い細胞殺傷性を示したと考えられる。この細胞死の原因を特定するためにカスパーゼ由来のアポトーシスの影響を検討したが、小胞体ストレスに関与するカスパーゼの発現は顕著に観察されなかった。この結果は小胞体ストレスの関与を否定するものではないが、クロロメチル化合物による細胞死には小胞体ストレスに限らない細胞死の機構が関与していると考えられる。本研究期間では、細胞死誘導メカニズムは解明されなかったが、クロロメチル化合物は細胞内に直接導入することにより高い細胞殺傷性を示すことがわかり、ナノ粒子の細胞内導入の制御により選択的に細胞死を誘導できる新たな細胞殺傷薬として利用できる可能性が示された。
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