2014 Fiscal Year Research-status Report
閉塞性動脈硬化症に対する運動療法が酸化ストレスに及ぼす影響
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26750181
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
山崎 佐枝子 信州大学, 医学部附属病院, 助教(診療) (50623914)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 循環器・高血圧 / リハビリテーション / 福祉 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】閉塞性動脈硬化症患者における、血管内治療および運動療法前後の血液中の酸化ストレスなどを測定し、運動による症状改善のメカニズムや、治療効果の評価指標、予後予測因子などを検討する。 【方法】間欠性跛行を呈し、血管内治療を行った閉塞性動脈硬化症患者25名を対象とした。未治療の冠動脈疾患、症候性の心不全、悪性腫瘍がある症例、維持透析症例は除外した。血管内治療前と3カ月後の酸化ストレスdiacronreactive oxygen metabolite(d-ROM)、ABI、跛行距離を計測した。跛行距離は2.4 km/h、12 %のトレッドミルでの連続歩行距離とした。 【結果】対象患者の平均年齢は73.6歳で、25名中23名が男性だった。治療前後の平均ABI、平均跛行距離、平均dROMは、治療前0.61、109 m、472.8 U.CARR、治療後0.91、313.7 m、390.2 U.CARRであり、有意な改善が得られた。治療前後のd-ROMの減少量は、治療前のd-ROM値と負の相関がみられた(p<0.0001, r=0.707)。治療前のd-ROM値が高いほど、治療後のd-ROMは減少した。またd-ROMの減少量は、ABIの増加幅や跛行距離の改善距離とも相関した。 【考察】血管内治療の手技は年々向上し、血管内治療を受ける閉塞性動脈硬化症患者は増加傾向である。血管内治療が患者の跛行距離を改善することは既知の事実だが、今回我々は血管内治療が患者の酸化ストレスを改善させることを示した。これは、血管を流れる血液量が増加した直接的効果と、症状が改善したことにより歩行距離、回数が増え、すなわち運動量の増加による間接的効果との相乗効果によると考えられる。酸化ストレスは全身性の炎症の指標であり、血管内治療は局所の血流だけでなく、酸化ストレスの改善により全身の動脈硬化の進展予防にも寄与する可能性があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に従って実施された研究をまとめ、英文論文を発表した。(Impact of endovascular therapy on oxidative stress in patients with peripheral artery disease. Circ J 78 (6):1445-1450, 2014) 心臓リハビリテーションの実施件数は年々増加し、既存の施設では対応困難となったことから、新規にトレッドミルを1台購入した。(心リハ単位数2013年4181単位、2014年6432単位)
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Strategy for Future Research Activity |
心臓リハビリテーションの効果は明らかであり、今後も実践と普及、学会発表や講演による成果発表や啓発活動を行っていく。特に閉塞性動脈硬化症に対する心リハは実践施設が少なく、跛行距離改善のメカニズムについて検討していく。 閉塞性動脈硬化症だけでなく、重症心不全や補助人工心臓適応症例に対しても、心臓リハビリテーションを行っていく予定であり、そのためのスタッフ研修に予算を充てている。
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Causes of Carryover |
当初計画よりも安価で研究が遂行できたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残額と27年度経費は、運動療法のバリエーションを増やすためのDVDや器具の購入、データの整理と、スタッフ教育のための研修費、教材費に充てる予定である。また成果発表のための学会出張費を予定している。
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Research Products
(6 results)