2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26750216
|
Research Institution | National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities |
Principal Investigator |
酒井 奈緒美 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 感覚機能系障害研究部, 研究員 (60415362)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 吃音 / 成人 / 質問紙 / ICF / 評価法 |
Outline of Annual Research Achievements |
予備調査として、4つのセクション(全113項目)から構成される質問紙(評価法試案)を20名の吃音成人に対し実施した。4セクションの得点傾向から対象者を群分けするために、クラスタ分析を行った結果、4つのクラスタに分類された。クラスタごとの各セクション得点の平均プロフィールを作成したところ、Ⅰ群は全般的に困難度が高い群、Ⅱ群は特定の場面で症状が顕著な群、Ⅲ群は困難度が軽度で比較的適応している群、Ⅳ群は回避により生活上の困難を感じている群と推測された。この結果から、評価法試案は、吃音のある成人を発話、心理、行動、社会参加等の総合評価によって下位分類できることが示され、それをもって支援法の選択補助ツールとして機能し得ると判断した。質問項目については、一部表現を改め、標準化されている心理領域の質問紙等の項目を追加するなどの修正を行った。 修正を行った改訂版(全123項目)を116名の吃音のある成人を対象に実施した。各下位セクションについて信頼性係数(α係数)を算出したところ16の下位セクション中13下位セクションにおいて、α> 0.7となり内的整合性が確認された。多くの下位セクションにおいて信頼性が確認されたが、想定したセクションを超えた項目間の相関を調べることとし、全123項目に対するクラスタ分析を行った。その結果、発話・対人関係に関しては「フォーマル」と「インフォーマル」なクラスタに分かれること、また吃音への対処と心理については、「回避・憂鬱型」「欲求不満・疲労型」「不安・マイナス思考型」に分類されることが示され、本質問紙によって吃音による困難を新しい視点から把握できる可能性が示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、QOLのような当事者の生活全般に及ぶ吃音の影響を軽減する吃音治療・支援方法を日本において普及させることである。そのために、①成人の吃音を、発話症状、心理・認知、社会参加など多側面から、包括的に評価する方法を確立すること、 ②その評価法に基づき、科学的根拠を有する治療法・支援法を確立することを目標としている。 当初の予定では、26年度に質問紙の完成と治療法・支援法の整理がなされる予定であったが、現在は質問紙完成に向け最終的な体裁を整えている段階である。進捗は少し遅れているように見えるが、質問紙の結果から新しい支援方法に関する知見が示されたり、支援につなげやすい質問紙構成に関して見通しがたってきたことから、本研究の目標達成に近づきつつあると評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
1. 国内外の治療・支援法の効果判定 国内外における成人吃音に対する現行の治療・支援法について調べ、整理する。特にどのような症例に対しどのような治療法が有効であったかを把握できるような文献・資料を中心に整理する。 2. 症例に対する質問紙の有用性と治療効果の決定 当センター病院を受診した患者を対象に、質問紙を含めた初診時評価を実施し、治療・支援法の選択・実施を行う。評価は、発話症状把握のための吃音検査法(小澤ら,2013)や音声分析、吃音歴などを問う問診票やその他の質問紙(改訂版S-24や発話に対する自己評価など)の実施を含む。 治療は3ヶ月を1クールとし、1クールが終了する毎に初診時と同様の評価(吃音検査と各種質問紙)を実施する。治療により問題が軽減して支援が終了した場合、あるいは問題は軽減せずとも治療が終了となった場合(ドロップアウトも含む)にも同様に評価を実施する。症例毎に発話症状や質問紙評価について治療前・中・後の比較を行い、治療・支援の効果を実証する。その結果を受け、選択した治療・支援法の適切性の評価を行い、さらに作成した評価法とその他の評価法との結果を比較することで、作成した評価法の有用性を評価する。
|
Causes of Carryover |
今年度、謝金・人件費として予算を立てていた分について、実際には研究協力者の中には謝礼を辞退する者がいたこと、また統計処理作業をアルバイトに依頼する予定であったが、作業を研究者自身が担当したことから、次年度繰り越しが生じた(「謝金・人件費」は0となっているが、実際には謝品を購入し研究協力者に渡している。その分については、物品費に計上されている)。 また次年度にいくつかの学会参加を予定しているため、あえて今年度の出費を控え、次年度に繰り越している。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は遠方で開かれる学会へいくつか参加を予定しており、特にポルトガルで開催される国際学会に参加・発表するための旅費として、繰り越し分を使用する予定である。
|
-
-
-
-
-
-
[Presentation] Psychometric Evaluation of the Japanese Unhelpful Thought, Beliefs, and Anxiety about Stuttering Scales.2014
Author(s)
Chu, SY, Sakai N, Mori K, Ide M, Iverach L.
Organizer
American Speech Language Hearing Association Conference
Place of Presentation
Orange County Convention Center, Orland, Florida, America
Year and Date
2014-11-20 – 2014-11-22
-
-
-
-
-