2015 Fiscal Year Research-status Report
残存身体機能を活かす発話障害者音声支援装置に関する研究
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26750219
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藪 謙一郎 東京大学, 高齢社会総合研究機構, 特任研究員 (50626215)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 音声生成 / ホルマント / 構音障害 / 発話 / インタフェース / タッチパネル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、発話の障害を支援する音声機器として、「構音器官(舌)の動き」の代替という視点から、「指の動き」によるリアルタイム音声生成器の改良・開発を行っている。本課題は、製品化に至ったスマートフォン向けアプリの改良を行うと同時に、利用者本人に残された声や身体機能を活用できる新しい方式の開発を目的としている。 平成26年度までに、ヒトが指でタッチパネル上をなぞる移動速度の限界を補うための入力速度補完手法の改良を行い、喉頭マイクから取得された利用者自身の声をタッチパネル上のなぞり動作と同期して構音機能を補うためのアルゴリズムを提案した。これは、発声機能が残存している構音障害の利用者が、本人が発声する声の抑揚等を使いながら、音韻を付加することを目指すものである。 平成27年度には、以上のことを踏まえて、利用者の声質をできる限り維持したまま、声を生成することに焦点を絞った。まず、共鳴を再現するホルマントフィルタ群の同定を行う方法を検討したが、同定には音声の専門家による知見が必要であるとともに、一意に定まりにくいことが分かった。そこで、第1第2ホルマントを除去した音声に対して線形予測フィルタの同定を行うことよって高次の周波数スペクトル包絡を再現する手法を検討した。実験により、一定周波数が続く数秒間のサンプル音声があれば、本手法で個人の声をある程度再現したまま、第1第2ホルマントを自在に移動させることができることが分かった。次年度は本人に残された発声機能に指の動きで構音機能を補った本人らしい声を生成できるように発展させる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先行研究の遅れによって本課題に取り掛かる時期が遅れたことと、入力速度補完手法のアルゴリズムを実装中にソフトウェアのバグが発生し原因の特定に予想よりも時間を要した。その結果、平成26年度の予定から順次遅れが生じている。 この遅れを踏まえて、平成27年度は、速度補完手法の評価のための聴取実験および声質制御手法の探索について焦点を絞ったが、声質制御手法のソフトウェアアルゴリズムの実装に予想よりも時間を要し、後者のみを行うこととなった。また予定していたペン入力以外の入力センサの電子回路の設計にも予想よりも時間を要している。それに伴って、評価実験及び研究成果の発表等に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
実験器においては、平成26年に行った速度補完による喉頭マイクからの音声との同期と、平成27年度の個人の声質の再現手法を統合させて、指の動きと本人に残された発声機能とを同時に使うことで、音韻が補完された音声を生成させることを目指す。 また、既に製品化しているスマートフォンアプリに対しては、平成27年度の声質維持のアルゴリズムを整理して、アプリの開発に携わる研究協力者のとの打ち合わせを経て、なるべく単純な一般のユーザが利用可能な設定方法で本人の声に近い音声を生成できるように改良することを目指す。さらに可能であればペンや指の入力以外のセンサにより、手指以外の動きで音韻の制御を行えるかどうかを検討し、韻律と音韻の双方の視点から、発声機能以外の残存身体機能をも活かせるような発話音声生成器の実現の足掛かりとしたい。
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Causes of Carryover |
先の項目で述べた理由により、評価実験及び研究成果の発表およびペン入力以外の入力センサの電子回路の設計が遅れているため、機器の購入や旅費の発生が順次に遅れており、そのための経費が次年度使用額となっている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ペン入力以外のセンサ入力装置を製作するために必要な電子部品・機械部品・入出力デバイスに加えて、ソフトウェア開発環境の整備費および、成果発表のための論文投稿料・学会参加費・旅費などが経費の主な使途となる。そのほか、音声生成実験や聴取実験のための携帯用端末機器や音声入出力装置、記録機器等を購入する予定である。また、スマートフォンアプリの開発担当者が北海道にいるため、打ち合わせのための旅費が必要となる。
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