2014 Fiscal Year Research-status Report
脊髄小脳変性症に合併する誤嚥と呼吸障害の関係-誤嚥を予防するプログラムの作成-
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26750233
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Research Institution | University of Tokyo Health Sciences |
Principal Investigator |
内田 学 東京医療学院大学, 保健医療学部, 准教授 (80531475)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 脊髄小脳変性症 / 嚥下 / 呼吸機能 / 2型呼吸不全 / 呼吸リズム |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、初年度という事もあり脊髄小脳変性症患者の嚥下機能と呼吸機能の評価を中心に実施した。対象者の中で、本研究の統制条件に合致するICARS15点以上で座位保持が可能である対象の選定が終了し、同意契約書が作成できた。予備研究として、嚥下機能と呼吸機能の食事中における機能評価を実施した。呼吸機能として、呼気終末二酸化炭素濃度と酸素飽和度、呼吸数等を測定項目とし実施した。嚥下機能に関しては、表面筋電図を用いた筋活動積分値と周波数解析、嚥下時間を算出し、呼吸機能との協調関係を調査している。誤嚥の発生が頻発の脳血管障害患者と異なり脊髄小脳変性症は食事の後半に差し掛かってからの機能変性が目立っており、誤嚥の発生もその時期に集中していた。呼吸機能には、如実に呼気終末二酸化炭素の鵜殿上昇を認めた事から肺胞低換気状態である事を予測している。この低換気に陥る原因に関して筋活動積分値と周波数解析の結果から開始時の積分値を100%に正規化し判断する限りでは呼気終末二酸化炭素濃度が上昇してくる時期からは、ほぼ50%まで低下し、周波数帯域も低周波よりに変容していたことから、疲労の可能性が示唆されている。そこで、疲労を発生させる条件下での嚥下機能と呼吸機能の変化を初年度の研究とした。MWSTに準じて3mlの冷水を10秒間隔で10回反復嚥下を実施させ、1回目と10回目での機能変化を検討した。誤嚥を呈す脊髄小脳変性症患者の多くは、10回目には筋活動積分値が有意に低値を示し、周波数帯域はType1繊維の活動を示す特徴となっていた。嚥下機能は著しく機能低下を認め、日常的に食欲も低下している事から栄養状態も不良であり、エネルギー必要量は結果的に減少している状況であるが、エネルギー消費量は2型呼吸不全様の呼吸携帯を示す事から不要なエネルギーが消費され、全体的に骨格筋量も減少をしてしていた特徴があげられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は、対象者の選定に多少時間を要したが、所属研究機関の研究倫理委員会の承認と、対象の同意書作成が終了した。現在まで円滑に研究が進行している。対象者への同意書作成がレベルダウンにより3名ほど終わっていないが、軽快し次第契約を交わす予定で進めている。H27年度も円滑に進められる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、脊髄小脳変性症患者に対して、定期的な呼吸リハビリテーションプログラムの実践を予定している。肺胞低換気を示す2型呼吸不全様の呼吸状態が特徴である事から、換気を亢進させる手法をプログラムに導入し、時間的変遷の中での呼吸器と嚥下の機能性を同調して調査する。1ヶ月から2ヶ月の介入期間を設けて、誤嚥の発生頻度、嚥下機能、呼吸機能を縦断的に研究する予定としている。対象患者を、東京、大阪、福岡、鹿児島、北海道の範囲で選定し、それぞれの場所で介入研究を実施し効果判定を実施する予定である。 換気を亢進させるプログラムとして、胸郭可動域練習、深呼吸(シルベスター法)、補助装置(ボルダウィン・スーフル)などを用いて低換気状態の呼吸機能を改善させるメニューとする。H27年度には換気改善にて嚥下機能が改善されるかどうかの検討を最終的に実施する。 嚥下機能の判定には、表面筋電図学的解析を用いるが、嚥下の試料は改訂水飲み試験に準じて3mlの水を用いた自由嚥下時での顎二腹筋、胸骨舌骨筋筋活動積分値、周波数解析とする。介入前後の嚥下筋活動の程度と、MWSTの成績を効果判定材料とする。
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Causes of Carryover |
研究の遂行場所として、鹿児島県、大阪府、福島県、福岡県を予定していたが、対象者の選択の問題でその地区での測定が行えなかったために旅費、宿泊費としての費用がが残っている。病院内の倫理委員会に時間が要した結果であり、次年度には解決出来るものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度、測定が行えなかった鹿児島県、大阪府、福岡県での測定を追加する事で当初の研究計画に追いつく流れとなる。研究の遂行上問題はなく、6月以降測定、解析作業を進める予定である。
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