2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26750235
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Research Institution | Nagasaki Institute of Applied Science |
Principal Investigator |
水野 裕志 長崎総合科学大学, 工学部, 講師 (30591234)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 予測精度 / 予測時間 / 温度校正 / 測温回路 / 低消費電力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,高齢者,特に痩身者にも簡単に使用できる予測式電子体温計の研究開発を目的としている。測温部にはスポンジ状で痩身者の腋窩にもフィットするような構造を持ちながらも,短時間(100秒程度)に±0.2℃の精度で体温計測ができることを目標としている。本年度の研究成果を以下に示す。 (1)高精度の標準温度計と恒温槽を用いて腋窩環境を模擬し,試作した電子体温計(熱伝導率の良い構造を持った測温部)のサーミスタに伝わるまでの温度変化のデータを収集した。測温部の構造を電気回路的に表したモデルを用いて、精度の良い予測アルゴリズムを開発し、収集したデータから予測精度を検証した。結果、飽和温度32℃から42℃の範囲では、予測精度:±0.2℃,予測時間:最大2.5秒であった。 (2)測温部に取付けるスポンジ材料の検討として,一般に市販されている水分吸収のない単独(独立)気泡のスポンジを選定・加工し,熱伝導率の高いシリコーンでコーティングできることを可能にした。 (3)試作した電子体温計の妥当性データを市販されている電子体温計と比較するために,温度校正が必要となる。試作品について温度校正を行った結果,±0.05以内の高精度を実現でき,その技術も確立できた。また,応答時間(飽和温度の90%に到達する時間)は約4秒であった。低消費電力化を図った測温回路を設計し,消費電力について温度37℃における測温部の抵抗値から10分間消費する電力量を算出した結果,約0.3μWであった。この成果は,消費電力を考慮しなければならないマイコンを用いた予測アルゴリズムの開発や,さらには無線モジュールを組み込んだ体温管理システムの構築に有用な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自己点検による評価としては,おおむね順調に進展していると考えている。しかしながら,測温部に取付けるスポンジ材料について,数多くの検討やデータ取集が不足しているのが現状である。理由として,熱伝導率の良い測温部の試作や温度変化を計測するための高精度な計測システムの構築,また,スポンジのコーティング材料の検討・選定など,本研究を遂行するための基盤となる技術の確率に時間を費やしたことであると考えられる。よって,今年度は確率した技術をもとに,さらなるスポンジ材料の検討や計測条件の見い出しなども進められると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた結果を基に,測温部にスポンジを取付けた場合の温度変化について様々な環境下を模擬し,データ収集と解析を行い,同時に測温部構造のモデルの高精度化を図る。これまでの実験から,モデルをベースとした温度予測が可能であることを示したが,当然,外的要因やスポンジの特性,また,体表面との接触熱抵抗などの影響より誤差が生まれてくる。これらの要因を見出す。高精度化には,モデルに用いるパラメータの推定が重要となってくることから,試作した測温部の熱伝導率等を解析し,世界中で一般的に使用されている数値計算解析ソフトウェアであるMATLABを使用し,算出した温度変化式を用いたモデルシミュレーションを行う。熱解析やさらなるスポンジの改良なども今年度の研究課題の一つである。また,開発する電子体温計に用いるマイコンの選定とプログラム開発を行う。モデルの精度が高ければ、短時間で高精度の予測ができる。ただ,あまりにも複雑なモデルではパソコンでは計算できても,内蔵する予定のマイコンでは計算できないためモデルの最適化が必要となる。現在はパソコン上で最小2乗法を用いたフィッティングアルゴリズムを使用しているが,マイコンにはそのまま搭載できない。マイコンを用いた予測アルゴリズムの開発を行うため,消費電力等を考慮しながら,体温計に使用するマイコンの選定を行う。MATLABのコードジェネレータを使用し,プログラムを移植しながら,動作や計算精度の確認も行う。
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Causes of Carryover |
当初計画していた電子部品の購入のための予算としておいた助成金の一部であったが、試作した測温回路の部品点数が低減できたため、コスト削減が可能となったのが理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の研究課題であるマイコン選定やプログラム開発の環境準備など、H8などマイコンを実装済みの基板の購入の検討も含め、詳細な使用計画に含める。
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