2015 Fiscal Year Research-status Report
「いのちの教育」における「身体」の位置づけ-歴史的展開からの再考-
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26750244
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
青柳 路子 茨城大学, 教育学部, 准教授 (70466994)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | いのちの教育 / 身体 / 生と死 / 死生観 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、まず日本の生と死の教育の、およそ40年間にわたる実践や理論研究について文献研究を行った。時代的・社会的背景を考慮しながら検討することで、生と死に関わる教育における身体の位置づけについて明らかにした。 現在の「いのちの教育」へと至る、生と死に注目した教育では、子ども自身の身体的発達を考慮して、いのちの誕生や性徴の変化に関わらせながら身体についての言及はなされている。しかし、1990年代以降は当時の日本社会の様々な事象もあって、心の領域が前面に押し出されるようになり、身体は後方に位置づくようになっている。そして2000年代以降の「いのちの教育」では、その力点は明らかに「心」に置かれる傾向にある。生のみならず死も含む「いのち」を「心」に特化することには危うさが指摘されている。その危うさは、身体を位置づけることで回避できるものとなりうるのか。身体論の諸研究や発達理論に学びながら考察を続けている。 以上の日本における生と死の教育についての検討と並行して、アメリカでの生と死に関わる教育事情についても文献研究に基づいて検討し、日米の比較研究にも取り組んだ。今後、アメリカで用いられているテキスト等を検討資料とすることで、比較研究を深めていく。 また平成27年度は、生と死の教育を実践してきた実践者にインタビューなどの聞き取り調査を行うための準備に取り組んだ。当初からインタビューを予定していた実践者の死去に伴い、インタビュー対象者を一部変更することになったため、改めて対象とする実践者の行ってきた実践を文献研究により分析、検討し、次年度に行う実践者への聞き取り調査の準備を整えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度の研究進行の遅れが響いており、やや遅れ気味である。平成27年度は遅れを取り戻すべく善処したが、自己評価としては、やや遅れていると判断せざるを得ない状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度となる平成28年度は、研究にあてる時間を集中的に確保し、当該年度の課題を明確にした上で、適宜研究補助者の協力も得ながら研究に取り組むようにする。
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Causes of Carryover |
「いのちの教育」に関してインタビュー調査を行う予定の対象者2名との日程調整がうまくいかず、旅費の使用を見送ることになった。また同様にインタビュー調査を行う予定であった対象者1名が他界したため、インタビュー調査から文献等による調査に切り替えることになった。そのため、研究費の使用に異動が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度はインタビュー調査対象者と早い段階で日程調整し、予定通りの経費執行を行う予定である。
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