2014 Fiscal Year Research-status Report
あがりが巧みな運動に与える影響―情動と運動学習の接点―
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26750245
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
吉江 路子 独立行政法人産業技術総合研究所, 自動車ヒューマンファクター研究センター, 研究員 (00722175)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 感情 / 運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
スポーツの試合や音楽の公演など,他者から評価されながら巧みな運動制御をすることが求められる場面では,緊張・あがりが喚起されることでパフォーマンスが低下し,練習の成果を十分に発揮できないことがある。本研究では,こうした緊張・あがりによるパフォーマンス低下を防ぐための対処法を提案することを目指し,他者の感情的反応が運動に及ぼす影響を調べることを目的とする。初年度である本年度は,まず,緊張・あがりを喚起するための視覚刺激及び聴覚刺激の作成に取り組んだ。プロ・アマチュアの俳優に,顔表情及び音声でさまざまな感情を表現してもらい,顔表情の撮影及び音声の録音を行った。感情的音声刺激を編集後,予備実験によって判別率の良いサンプルを絞り込み,最終的な刺激セットを作成した。これらの音声刺激セットを用いて,行動実験を実施した。日常的に,運動行為をしている際に緊張・あがりが喚起されると,自分の行為やその結果として生じる外的刺激を自分がコントロールしていないような錯覚に陥る(「行為主体感」が減弱する)ことがある。これを踏まえ,自発的な運動(ボタン押し)とその結果として生じる聴覚刺激(感情的音声)の主観的時間間隔が狭まるという時間知覚のイリュージョン(intentional binding)を利用して行為主体感を測定する心理物理学的実験を行った。その結果,他者の感情的反応の種類やその予測によって行為主体感が変化することを明らかにでき,現在本成果の論文化に向けて準備を進めている。年度中,国内外の学会・研究会で研究発表・招待講演を行った他,音楽家向けに緊張・あがりに関する連載記事を執筆するなど,アウトリーチ活動も積極的に行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は,緊張・あがりを喚起するための視覚・聴覚刺激を開発することができた。さらに,聴覚刺激を用いて,他者の感情的反応が運動行為の知覚に及ぼす影響を調べる実験を実施し,論文投稿準備の段階まで進むことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
他者の感情的反応が運動行為の知覚に及ぼす影響に関する実験の結果を詳細に分析し,論文投稿に向けて準備を進めたい。また,本年度開発した刺激を用いて,緊張・あがりが運動スキルのさまざまな要素に及ぼす影響をさらに検討していきたい。
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Causes of Carryover |
以前に確立した実験セットアップを工夫して再利用することができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度得られた成果を発表するため,論文の投稿費・出版費に使用する。また,新たな実験系を開発するための備品・消耗品費や実験参加者への謝金に使用する予定である。
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