2016 Fiscal Year Research-status Report
あがりが巧みな運動に与える影響―情動と運動学習の接点―
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26750245
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
吉江 路子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 自動車ヒューマンファクター研究センター, 研究員 (00722175)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 感情 / 運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
スポーツの試合や音楽の公演など,他者から評価される社会的場面において緊張・あがりが喚起されると,運動パフォーマンスが低下することがあり,多くの人々を悩ませている。本研究では,他者の感情的反応が運動に及ぼす影響の背後にあるメカニズムを解明し,緊張・あがりによる運動パフォーマンス低下を予防するための対処法を提案することを目指している。さて,緊張・あがりが喚起される際,あたかも自分で自分の身体を動かしていないような感覚が生じることがある。すなわち,「自分で自分の身体運動を制御し,外界に何らかの結果を引き起こしている」という感覚である「行為主体感」が変容することがある。このことから,本年度は,運動行為に対する他者からの感情的反応が行為主体感という運動知覚に与える影響を検討した。行為主体感を定量化するため,時間知覚の錯覚を利用した。すなわち,意図的運動行為(ボタン押しなど)を行い,その一定間隔(典型的には250ミリ秒)後に行為の結果としての感覚信号(音など)が生じると,行為と結果との間の主観的時間間隔が狭まる現象である「intentional binding」を用いた。この現象は,運動を行ったタイミングが感覚信号のタイミングに近づく現象と,感覚信号のタイミングが運動のタイミングに近づく現象という2つの要素に分離できるが,本年度は,主に前者に焦点を当てた。過去の研究結果と同様に,自らの運動行為が良い結果を引き起こした時は,悪い結果を引き起こした時に比べて行為主体感が上昇する傾向が認められた。さらに,こうした他者の感情的反応が行為主体感に与える効果は,結果に関する「予測」の影響を受けることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,運動の結果として生じる他者の感情的反応やその予測が行為主体感という運動知覚に与える影響を明らかにした。また,これらの実験結果の一部を原著論文として発表した。以上のように,おおむね順調に成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までに,緊張・あがりが運動制御や運動知覚に与える影響を明らかにした。今後は,さらに課題設定を工夫し,緊張・あがりによる運動パフォーマンス低下を予防するための対処法の提案に繋がるような成果を得ていきたい。
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Causes of Carryover |
以前に確立した実験セットアップを工夫して再利用することができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新たな実験系を開発するための備品・消耗品費や実験参加者への謝金に使用する予定である。
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