2015 Fiscal Year Research-status Report
両眼を用いた水平および奥行き方向への注視トレーニングの効果に関する検討
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26750263
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
國部 雅大 筑波大学, 体育系, 助教 (70707934)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | スポーツ科学 / 実験系心理学 / 両眼眼球運動 / 注意 / 利き目 / 視野 / トレーニング効果 / フィードバック |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、視野空間内における注視位置の移動の際に、利き目が非利き目に比べて安定した動的特性を示すかという問題に加え、視野空間内で注視位置の維持を行う際においても、利き目が非利き目に比べて安定した特性を示すかという問題に関し、各種スポーツ競技選手の両眼注視における動的特性および注視安定性を詳細に調べ、競技種目間差および技能レベルとの関連について検討し、さらにそのトレーニング効果を検証することを目的とした。 研究2年度目においては、2つの研究を行った。まず、前年度に引き続き、両眼注視および両眼眼球運動を測定およびモニタリングし、左右各眼の潜時やピーク速度などの動的特性を短時間で分析するシステムを改良した。このことにより、短時間で対象者の両眼眼球運動特性を分析し、フィードバック情報を即時的に提示することが可能となった。 次に、実験室で測定したデータを実際のスポーツ場面に応用することを念頭に置き、実際のプレー中に相手と対峙する状況下において素早い反応動作を行う際の注視の状態に関する検討を行った。バレーボール選手8名を実験参加者とし、実際のコート内で相手側からのスパイク攻撃に対してレシーブによる反応課題を行った。実験参加者は小型電極および携帯型データ集録装置を装着し、眼電図によりプレー中の注視の挙動を分析した。その結果、プレー中は平常時に比べ瞬目の頻度が低下したことに加え、攻撃側のボールコンタクトを基準とした直前直後のタイミングで瞬目が生起した試行において、レシーブ反応動作の遅延または失敗が起こっていることが観察された。素早く適切な反応を行う際には、反応動作を行う際の手がかり情報となる攻撃側のボールコンタクト時点付近での瞬目を防ぐように注視状態を保つことが、有効な方略の一つであることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究2年度目においては、次年度において実施予定である両眼注視および両眼眼球運動に関するトレーニング実験を見据え、注視および眼球運動の測定およびフィードバックに関する一連のシステムの改良を行った。これにより、スポーツ選手や実際のスポーツ場面への応用を見据えた測定環境を構築することができた。 また、実験室で行う研究やデータ測定と並行して、実際の球技スポーツのフィールドにおいても、注視の挙動を測定する手法を検討した。その結果、ボールが高速で眼前に接近してくるような状況で反応動作を行う場合において、注視の状態に関するデータを取得することができた。このことにより、実験室環境で測定した注視および眼球運動特性のデータと、実際のスポーツ場面において測定した注視および眼球運動のデータとを比較検討していくことが、今後の研究において可能になると考えられる。 一方、複数のスポーツ種目間での注視および眼球運動特性の比較については、十分な検討を行うまでには至っていないため、次年度以降の課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度においては、左右各眼の特性変化に着目した両眼注視のトレーニング効果に関する縦断的研究をテーマに実験研究を行う。複数種目のスポーツ選手および一般成人を対象に、3次元視野空間内に置かれた注視点への安定した注視維持や、水平方向および奥行き方向における素早く精確な注視移動を課題としたトレーニングを実施する。左右各眼の注視および眼球運動特性をトレーニング前後で比較し、その効果を検討するとともに、利き目と非利き目の差異についても継続的に検討を行う。 また、実験室と実際のスポーツ場面において取得した注視および眼球運動特性のデータを比較検討することで、実験室で測定されたデータの有効性や妥当性についての検証も行う予定としている。さらに、実際のスポーツ場面への応用を見据え、スポーツ選手への測定データのフィードバックを継続的に行いながら、スポーツにおける知覚-運動トレーニングを行う際の資料として本研究を活用する可能性を検討していく。3年間の研究のまとめとして、国内外の学会および学会誌等において研究成果を発表する。
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