2015 Fiscal Year Research-status Report
超短潜時の打球運動における素早い修正に関する中枢メカニズムの検討
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26750269
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Research Institution | National Institute of Fitness and Sports in Kanoya |
Principal Investigator |
幾留 沙智 鹿屋体育大学, スポーツ人文・応用社会科学系, 助教 (20724818)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 捕捉行為 / 運動修正 / 予測感覚情報 / 経頭蓋磁気刺激 / 補足運動野 |
Outline of Annual Research Achievements |
スポーツではしばしば、予想とは異なる運動の遂行が要求される。そこで本研究は、特に動作時間が短く素早く正確な修正が必要とされる打球運動を対象として、事前の予想が外れた際に行われる素早い修正に関わる中枢メカニズムを解明することを目的とした。この点について、これまでの研究から、運動開始前に脳内で生成される予測感覚情報 (これから行う運動によって得られると予想される感覚情報) が修正に利用されていることが明らかとされている。このような知見に関して平成26年度には、これまでよりも短時間で完了する超短潜時の運動を対象とすることで、予測感覚情報を用いた素早い修正の更なる可能性について検討を行った。実験課題は、ボール移動のようにレール上を直線移動する光刺激にタイミングに合わせて肘を伸展させ、スイッチを押す一致タイミング課題であった。光刺激の移動速度は事前に教示されたため、実験参加者は肘伸展動作について事前に計画を立てることができた。しかし、いくつかは誤教示であり、この際実験参加者は素早く運動を修正することが要求された。このような課題遂行中、予測感覚情報の生成を担う脳領域 (補足運動野) に対して経頭蓋磁気刺激を提示することで、修正に対する予測感覚情報の貢献について検討を行った。結果として、350ms程度で完了する動作においては磁気刺激の提示によってパフォーマンスが阻害された。これより、超短潜時の運動においても予測感覚情報を利用した修正が実行されることが示唆された。 さらに平成27年度には、同様の課題を用いて磁気刺激の提示タイミングを操作し、予測感覚情報が修正に利用されるタイミングについて検討を行った。その結果、磁気刺激が動作開始後に提示された場合にはパフォーマンスの低下が確認されなかった。これより、予測感覚情報は動作開始前に生成・利用され、素早い運動修正が可能になっていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は研究成果を国際学会にて発表した。現在、このような成果を原著論文として投稿するために準備を進めている段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、異なる補足運動野とは脳領域に対して磁気刺激を提示することで、運動遂行中に生成される予測感覚情報の修正に対する貢献について検討を行う予定であったが、これまでの論文投稿過程において、磁気刺激を提示する脳領域の特定手法の精度が大きな問題になることを実感した。そこで、運動遂行中に生成される予測感覚情報の修正の貢献度についての検証には、異なる手法を提案し、慎重に進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
当初の予定していたよりも英文校正費が抑えられたことにより、次年度使用額が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまで以上に予算執行の状況を常に把握するよう努め、当初の予定よりも経費が抑えられた場合には、サンプル数を増やし人件費に充てることで研究を促進させる。
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