2015 Fiscal Year Research-status Report
漸増負荷走中の血糖値の動態を用いた長距離走のトレーニング評価方法の検討
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26750275
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Research Institution | Ibaraki Christian University |
Principal Investigator |
中村 和照 茨城キリスト教大学, 生活科学部, 准教授 (10613292)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 長距離走パフォーマンス / 持久性競技能力 / トレーニング強度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,漸増負荷走時の血糖値の動態が長時間におよぶ競技種目のトレーニング評価指標として活用出来るかについて明らかにすることを目的とする. 2014~2015年度は市民ランナー16名(男性9名,女性7名)を対象とした.フルマラソンレース23週前と1週前に漸増負荷走を実施し,最高酸素摂取量(VO2peak),VO2peakの走速度(V- VO2peak),血中乳酸値が2 mmol/l時の走速度(V-LT),血中乳酸値の上昇量(⊿Lac),血糖値の上昇量(⊿Glu)を評価し,練習時には心拍数の記録を行ない,練習強度を23週前の漸増負荷走時の心拍数を基準にLT強度未満,LT強度以上に分類し,練習強度と漸増負荷走時の測定項目の変化量との関連性,レース1週間前の漸増負荷走の測定項目とマラソンレースの走速度およびV- VO2peakに対する相対強度との関連性について検討した. その結果,LT強度以上の練習時間と⊿Glu/⊿Lacの変化量(r = 0.573,p < 0.05)に有意な相関関係が認められたが,VO2peak,V- VO2peak ,V-LTとの関連性は認められなかった.VO2peak(r = 0.742,p < 0.01),V- VO2peak(r = 0.902,p < 0.01),V-LT(r = 0.690,p < 0.01),⊿Glu/⊿Lac(r = 0.499,p < 0.05)とマラソンの走速度には有意な相関関係が認められたが,V- VO2peakに対する相対強度ではこのような関連性は認められなかった. このことから,漸増負荷走時の血中乳酸値の上昇に対する血糖値の上昇量(⊿Glu/⊿Lac)の増大は,マラソンのパフォーマンスを向上させる要因の1つになる可能性が推察され,⊿Glu/⊿Lacを増加させるにはLT強度以上のトレーニングが重要になると考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2015年度までに,男女各10名の測定を行なう予定であったが,2015年度に途中辞退者1名,レース直前の故障者2名が生じたため,男女の比較を行なうには被験者数が足りない状況である.また,2014年度の結果では,血中乳酸値が4 mmol/lの速度(V-OBLA)に対するマラソンレース時の相対強度が高い者は,漸増負荷走時の血糖値の上昇量が高くなる傾向が認められたが(r = 0.69,p = 0.06,n = 8),2014年度と2015年度の測定結果を合わせると,漸増負荷走時の血糖値の動態とフルマラソンレースの相対強度には関連性を認めることが出来なかった.この要因としては,2014年度(1レース)と2015年度(2レース)では,レース時の気温等の環境条件が異なっていたことがあげられ,環境条件の違いが影響し,フルマラソンレースの相対強度と漸増負荷走時の血糖値の動態との関連性が認められなかった可能性も考えられる.このことから,パフォーマンスとの関連性については,環境条件の影響が少ない条件を設定したうえで検討を進める必要があると言える. 2015年度までに予定していた被験者数に達していないこと,パフォーマンスとの関連性については,環境条件を統一した測定を加えて検討する必要性があることから,現在の達成度はやや遅れていると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度までに終了を予定していた,研究課題Ⅰ,Ⅱについては,解析対象データを男女各10名以上とするために,2016年度まで継続して測定を実施する. 当初の計画では,2016年度は,専門的な長距離走のトレーニングを行なっていない男性を高強度トレーニング群と中強度の一定負荷走を行なう群の2群にランダムにわけ,6週間のトレーニング介入を行ない,トレーニング介入前後の漸増負荷走時の血糖値の動態の変化と長距離走のパフォーマンスとの関係性について検討する予定であった.しかしながら, 2015年度までの測定結果から,屋外での長距離走のパフォーマンスは気温等の環境条件の影響が大きくなるため,異なる測定日の結果からパフォーマンスとの関連性を検討することは難しいと考えられた.このため,漸増負荷走時の血糖値の動態がフルマラソンのような長時間におよぶ競技種目のトレーニング評価指標として活用出来るかを明らかにするには,環境条件を統一した測定を追加する必要があると考えられた. このことから,2016年度は予定を変更し,継続的に練習を行なっている市民ランナー(男女各10名)を対象とし,気温等の環境条件の影響の少ない屋内のトレッドミルを使用し,漸増負荷走と80 %VO2peak強度での最大走行時間および距離を測定し,漸増負荷走時の測定項目との関連性について検討を行なう. 2016年度までの結果から,漸増負荷走時の血糖値の動態が競技現場でトレーニング評価指標として活用できるかについて明らかにする.なお,2016年度に予定していたトレーニング介入研究については,2016年度の測定結果を踏まえて,2017年度以降に実施する予定である.
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Causes of Carryover |
トレーニング分析期間中に体調不良によって,1名の研究協力辞退があったため,辞退者1名分の測定に関わる物品費,謝金を次年度使用額として残したため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度までに終了予定であった研究課題Ⅰ,Ⅱを2016年度も継続して行なうため,測定に必要な物品費,謝金として使用する.
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