2015 Fiscal Year Research-status Report
運動後栄養摂取のタイミングに関する研究-消化吸収活動の観点から-
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26750306
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
鍛島 秀明 県立広島大学, 人間文化学部, 助教 (40714746)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 消化管血流 / 胃内容排出 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は,高強度間欠的自転車運動が,その後の消化管活動にどのような影響を及ぼすのかを明らかにし,消化吸収の観点から,どのタイミングで栄養摂取すべきかを検討した。健康な若年男女8名は,脚自転車エルゴメータにて,120% of VO2peak負荷で20秒,引き続いて20Wで40秒こぐセットを30回繰り返す運動を行い,運動終了の5分後(PE-5),あるいは30分後(PE-30)に,タンパク質・糖質含有飲料を摂取し,1時間の安静を保った。コントロール条件(Con)として,飲料摂取のみの条件を行った。超音波ドップラー法を用いて,腹腔動脈(CA)と上腸管膜動脈(SMA)の血流量(BF)を,超音波法を用いて,胃内容排出(GE)を測定した。BFCAは,PE-5では,運動終了直後に有意な減少を示し,飲料摂取後に安静値のレベルまで回復したが,それ以上に増加することはなかった。PE-30では,運動終了直後には有意な減少を示し,飲料摂取直前には安静レベルまで回復した。また,飲料摂取後は,15-30分後まで有意な増加を示した。Conでは,飲料摂取30分後に有意な増加がみられた。BFSMAは,PE-5では,飲料摂取30-60分後に有意な増加を示した。PE-30では,飲料摂取15-60分後に有意な増加がみられた。Conでは,飲料摂取30-60分後に有意な増加がみられた。GEは,PE-5では,飲料摂取15-60分後,Conに比較して有意に高く,飲料摂取15-45分後,PE-30に比較して有意に高かった。ConとPE-30との間に有意差はなかった。運動直後,BFCAが減少しているタイミングで飲料摂取を行うと,その後のGEに遅延が生じた。一方,BFCAが安静値まで回復したタイミングでは,GEは遅延しなかった。PE-5におけるBFSMAの増加の遅延は,GEの遅延が要因として挙げられる。消化管の諸機能から望ましいと考えられる運動後の栄養摂取のタイミングは,運動によって減少した消化管BFが回復した後であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の目標は,「運動後,栄養摂取のタイミングに応じて,消化管活動がどのように変容するのかを評価し,消化器系にとって「良い」・「悪い」の栄養摂取のタイミングを探索する」であった。申請者の仮説通り,運動直後は消化管の諸機能に低下が認められるといった,本研究の中でも最も重要な知見を得ることができた。一方,様々な運動様式の検討を見込んでいたが,高強度自転車運動のみの検討に終わった。以上のことから,進捗状況はおおむね順調であるとした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は,レジスタンス運動後,栄養摂取のタイミングに応じて,消化管活動がどのように変容するのかを検討することを目標とする。もし,平成27年度と同様の結果が得られた場合,消化器系にとって「良い」あるいは「悪い」タイミングで継続的に栄養補給をさせ,運動後栄養摂取のタイミングがトレーニング効果に及ぼす影響を検討する。そこで,以下の計画で実験を行う予定である。本実験に関わる内容は県立広島大学の倫理委員会にてすでに承認されており,直ちに実験を開始できる状況にある。実験は5月~7月にかけて予備実験を行う。本実験は8月~10月に実施する。本実験において,仮説通りの結果が得られた場合,1ヶ月間のトレーニング実験を行う。実験は,合計3回のプロトコールをランダムな順序で行う予定である。被験者は10分間安静にした後,下肢レジスタンス運動(最大挙上重量の70%・10回8セット)を45分間で行う。運動終了5分後(直後),30分後,あるいは60分後のいずれかのタイミングで糖質・タンパク質含有飲料を200kcal摂取し,仰臥位の姿勢で180分間の安静を保つ。胃内容排出は13C呼気試験法を,胃運動は胃電図法を用いてそれぞれ評価する。
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Causes of Carryover |
平成27年度にトレーニング機器を購入する予定であったが,昨年度秋に,本学の体育館にてトレーニング機器が初めて導入された。したがって,トレーニング機器の購入は不要となった。このことから,当初予定していなかった消化管粘膜損傷レベルを反映する小腸脂肪酸結合タンパクの測定キットを購入し,その測定を行った。報告書内には結果を記載しなかったが,有用な情報が得られた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は,実験室ではなく一般のトレーニング室で実験を行う。今のところ,トレーニング室には測定機器等は配置されていない。今年度は,トレーニング機器の代わりに,トレーニング室で用いる測定機器を購入する。具体的には,データ収録装置および消化管運動測定装置を購入する。また,今年度は,測定項目が少ないことから,被験者数を増やす予定である。したがって,被験者および実験補助者への謝金分に多くの資金を充てることになる。
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Research Products
(10 results)