2015 Fiscal Year Research-status Report
レジリエンスにおける注意機能の重要性に着目したトレーニング課題の構築
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26750322
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井隼 経子 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 研究員 (70625946)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | レジリエンス / 注意機能 / 選択的注意 / フランカー課題 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き心的回復力であるレジリエンスと注意機能都の関係を検討した。こころの回復に個人差があるのは,人間のもつ注意機能が関係すると仮定した。本研究ではレジリエンスの個人差をもたらす要因のひとつとして注意機能を取り上げる。注意はポジティブ感情と関わっており 心の回復のために大きく役立つと思われる。Grol and De Raedt (2014) はレジリエンスと注意の拡散との関係を取り上げ,レジリエンスが高い群ほどポジティブ感情を喚起しやすく注意の範囲も広いことを示した。さらに,Sato et al. (2013) では,ストレス処理と注意処理との間に共有する部分があることが示された。レジリエンスはストレス対処に関わる機能であり (Bonano & Galea 2007; 平野,2012),ストレス処理とレジリエンス,そして注意処理との間にも共有される資源が存在することが予測される。本研究では,レジリエンスと注意処理との関係を検討した。ここでは,選択的注意の機能に着目し,Sato et al. (2013) にて用いられたフランカー課題を用いた。本研究では,フランカー刺激の他に妨害刺激を用い,知覚負荷を操作した。その結果,レジリエンスが高いグループはどの条件のときにも課題の処理に時間がかかり,妨害刺激の干渉があったことが示された。これは,レジリエンスが低いグループに比べ,高いグループにおいて注意の範囲が広く,多くの処理を行うことが可能なためではないかと考えられる。また,レジリエンスが低いグループにおいては知覚負荷が高いときにフランカー効果が見られず,課題の処理のスピードは速かった。これはレジリエンスが低いほうが注意能力が優れているというわけではなく,膨大な処理を行うことが不可能なため選択的注意の範囲を縮小させ標的のみを処理しているのではないかと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,昨年度引き続きレジリエンスと注意の関係を検討した。その成果は日本心理学会79回大会で発表された。また成果をまとめた論文を執筆中であり,投稿予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度,今年度の成果を元に,トレーニングに関する検討を開始する。また,引き続き基礎的な検討も行い,適宜,応用面への修正を行う。成果は国内外の学会で発表を行い,適宜パーソナリティ,メンタルヘルス系の専門誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
予定していた実験参加者にやや満たなかったため,また,購入予定の物品がすでにそろっていたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験の参加者及び実施する実験を増やし,より詳細な検討を行う予定である。
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Remarks |
研究に関連する成果 https://cotree.jp/columns/739
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