2014 Fiscal Year Research-status Report
高齢者における筋血流量を用いた新しい運動イメージ評価法の確立
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26750334
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
遠藤 加菜 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 助教 (60584696)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | リハビリテーション / 運動イメージ / 高齢者 / 筋血流量 / 運動機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
① 本研究計画では、運動イメージに対する筋血流応答を用いて、高齢者における運動イメージ出力を客観的に評価することを目標とした。今年度は、6名の健常高齢者(66±2歳)を対象に、下肢エルゴメーター運動イメージ時の左右外側広筋における筋血流応答を、2チャンネル型近赤外分光装置(NIRS)を用いて評価した。得られたデータのうち、局所筋血流量を反映すると考えられる酸素化ヘモグロビン濃度(Oxy-Hb)を分析した。実験では、まずエルゴメーター運動を行わせた。運動強度は運動時心拍数が年齢予測最大心拍数の40%相当に達する負荷とし、60rpmのペースで1分間行わせた。運動直後にBorg Scaleを聴取し、中強度負荷であることを確認した。次に、この運動の一人称イメージを閉眼で1分間行わせた。イメージ遂行直後にはイメージ鮮明度をVisual Analog Scale(VAS)を用いて[0(全くできない)~10(最高に鮮明)]の11段階評価で聴取した。
② Oxy-Hb増加は運動イメージ開始直後から緩やかに始まり、開始後約30秒の時点でピークに達した。イメージ終了後に、Oxy-Hbは緩やかに減少し約2分かけて安静値に戻った。イメージ鮮明度(VAS)は5±1であった。さらに、H26年度に購入した超音波診断装置(Doppler)を用いて、計測部位の筋層がどのくらい深部に存在した。その結果、筋層は皮膚表面から2-3cmの深部に存在することを確認した。近赤外光は皮膚から2-3cm程度の深部まで到達し組織ヘモグロビンによる吸収を受けることから、今回計測したヘモグロビン動態は外側広筋の血流動態を反映すると考えられる。また、下肢全体への血流量評価のために、Dopplerを用いて大腿動脈血流反応の計測を予備的に行った。
③ 以上より、健常高齢者において、下肢運動イメージは筋血流応答を引き起こすことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究目的である、高齢者において運動イメージ時に下肢筋でみられるOxy-Hb動態をNIRSによって計測し、筋血流量変化ならびに運動イメージ鮮明度のデータを得た。さらに、Dopplerを用いて計測部位である外側広筋の筋層がどのくらい深部に存在するかを確認した。その結果、外側広筋の筋層は皮膚表層から2-3cmの深部に存在していることを確認した。NIRSでは近赤外光が皮膚から2-3cm程度の深部まで到達し、組織におけるヘモグロビン吸収を受けることから、今回NIRSによって計測したヘモグロビン動態は、外側広筋の血流動態を反映しているものと考えられる。高齢者においても下肢運動イメージ中に、運動に関連した下肢筋肉における筋血流応答が生じることを明らかにした。また、Dopplerを用いて大腿動脈血流反応の計測を予備的に行った。以上のことから、当初の研究計画はおおむね順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は健常高齢者を対象に下肢エルゴメーター運動の遂行中および運動イメージ中にみられる下肢筋血流量指標を計測しデータを得た。その結果は、健常高齢者において下肢筋血流応答は主観的運動イメージによって増加するが、この増加反応は若年者と比較して減少することを示唆した。運動イメージによって下肢筋血流応答が生じにくい要因、あるいは下肢筋血流応答を誘発する要因とは何かという疑問は残された課題であり明らかにする必要がある。また、NIRSにより骨格筋ヘモグロビン動態の計測は遂行できたが、実際に末梢の筋血流量が変化するならば、下肢全体への血流量も増加するのか、という課題も残されている。 そこで平成27年度は、上記の課題を研究するために特に高齢者において下肢の筋血流応答を誘発する課題を明らかにするために実験デザインを改良する。当初の研究目的であった、下肢の運動イメージ鮮明化に関わる因子について明らかにするために、視覚的入力おより筋機械的入力が主観的イメージ鮮明度ならびに筋血流量を増加させるか否かについても調べる。これらの課題を検証するため、筋血流量計測のため客観的指標として、携帯型近赤外線組織酸素モニタ装置を用いて運動に関わる末梢肢におけるOxy-HbおよびDeoxy-Hbを計測するのに加えて、Dopplerを用いて導管血管における下肢全体への血流量測定を行う。 この研究成果は運動イメージを用いたより効率的なリハビリテーション実践の基礎的データに繋がることを期待する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、平成26年度には超音波診断装置(Vivid i, GE Healthcare製)を購入するために不足する予算を前倒し請求したが、この予算額と実際の購入額には若干の差額があったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度においては、繰越額と平成27年度研究費とを合わせて、謝金・旅費・消耗物品費などに執行して、研究を進捗させる予定である。
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Research Products
(3 results)