2014 Fiscal Year Research-status Report
温熱刺激に対する骨格筋の応答と筋萎縮抑制効果の検討
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26750347
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
大平 宇志 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 有人宇宙技術部門, 宇宙航空プロジェクト研究員 (40633532)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 骨格筋 / 廃用性筋萎縮 / 温熱刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、骨格筋の廃用性萎縮に対する予防・改善策として、運動処方が世間一般に認知されている。しかし、長期臥床患者や生活習慣病患者、高齢者の中には、健康上の理由から運動処方を行うことができない人もいる。したがって、運動処方以外の対策を確立することは重要である。骨格筋が活動量の変化に応じて形態や機能を変化させる現象を骨格筋のストレス(刺激)応答と捉えると、運動に伴い生じる刺激を別の手法で骨格筋に作用させることができれば、その手法は廃用性萎縮の新たな対策となり得ると考える。 近年、温熱刺激が骨格筋の肥大を促進し、萎縮を抑制することが明らかとなったが、そのメカニズムについては不明な点が多い。そこで、本研究では温熱刺激により骨格筋に効果がもたらされるメカニズムを追究し、最適な刺激条件を確立するうえで重要な知見を得ることを目的としている。 平成26年度は、細胞培養ユニットを搭載した共焦点顕微鏡を使用し、細胞培養ユニット内の温度上昇に伴うラット骨格筋由来筋芽細胞(L6細胞株)内のカルシウムイオン濃度変化を経時的に測定する実験を行った。その結果、培養液の温度上昇に伴うL6細胞内カルシウムイオン濃度の上昇はあまり顕著ではなく、あっても軽微であり、これを指標に最適な刺激条件を確立することは困難である可能性が示唆された。 一方、坐骨神経切除後、14日間の飼育期間中に間欠的温熱刺激を行ったラットと行わなかったラットから摘出したヒラメ筋のタンパク質発現解析からは、温熱刺激により酸化的代謝が高められることにより、タンパク質合成シグナルの活性状態が維持されるため、筋萎縮が抑制されることを示す結果が得られた。本結果は、温熱刺激効果がもたらされるメカニズムの解明につながる重要な知見であり、平成27年度に、より詳細な解析を行うことによって、最適な刺激条件を確立するために重要な指標を見つけることも期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラット骨格筋由来筋芽細胞(L6細胞株)のライブセルイメージングの実験系を立ち上げ、培養液の温度上昇に伴う細胞内カルシウムイオン濃度の経時的変化の観察を行った。また、ラット骨格筋のタンパク質発現解析からは、温熱刺激効果がもたらされるメカニズムにカルシウムシグナル以外も関与していることを示唆する結果も得られている。これらの結果を踏まえることで、平成27年度実施予定である実験を効率よく進展させることができる。したがって、順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に引き続き、ラット骨格筋由来筋芽細胞(L6細胞株)のライブセルイメージングを実施する。この際、平成26年度に実施したカルシウムイメージング実験で用いたFluo 4-AMよりも感度が高いとされる蛍光プローブを使用する。また、ウェスタンブロッティング法を用いたタンパク質発現解析により温熱刺激と骨格筋内カルシウムシグナルの関係を明らかにすることを目指す。さらに、温熱刺激により骨格筋内の酸化的代謝が亢進されるメカニズムについて、分子生物学的手法および生化学的手法を用いたより詳細な解析を行い、カルシウムシグナルとの関連についての追究や最適な温熱刺激条件を確立するための指標となる分子の探索も行う。
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Causes of Carryover |
計画通り実施した実験結果から、新たな項目を評価するための実験を行う必要が生じ、その準備作業に予想外の日数を要したため、年度内完了が困難となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度のカルシウムイメージングに用いた蛍光プローブよりも感度の高いものが複数存在することがわかった。したがって、実験データの精度をより高めるため、それらを用いたカルシウムイメージング実験の実施にかかる消耗品の調達に使用する。また、ラット骨格筋のタンパク質発現解析より確認できた現象について追究する分子生物学的手法および生化学的手法を用いた実験の実施にかかる消耗品の調達にも使用する。
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Research Products
(1 results)