2015 Fiscal Year Research-status Report
温熱刺激に対する骨格筋の応答と筋萎縮抑制効果の検討
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26750347
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
大平 宇志 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (40633532)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 温熱刺激 / 骨格筋 / 肥大・萎縮 / 細胞内シグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
坐骨神経について右側には切除手術、左側には偽手術を施したラットに温熱刺激を行い、ヒラメ筋の形態および細胞内シグナルに生じる変化について検討した。温熱刺激は湯浴により行い、手術の1日後から1日おきに麻酔をしたラットの後肢を42 ºCのお湯に30分間浸けた。その後、14日経過した時点で両脚よりヒラメ筋を採取した。形態解析の結果、間欠的な温熱刺激はヒラメ筋の成長に伴う肥大を促進するとともに、除神経に伴う萎縮を軽減することを確認した。分子生物学的手法を用いた解析の結果からは、除神経されたヒラメ筋ではatrogin-1/muscle atrophy F-box (Atrogin-1)およびmuscle RING-finger protein-1 (MuRF-1)の転写が亢進しており、それを負に制御することが知られるリン酸化protein kinase B (Akt)および70-kDa heat shock protein (HSP70)、peroxisome proliferator-activated receptor γ coactivator-1α (PGC-1α)の発現が減少していることが確認された。しかし、間欠的に温熱刺激を行うことにより、Atrogin-1 mRNAの発現上昇は抑制され(MuRF-1 mRNAの発現については効果なし)、リン酸化AktおよびHSP70、PGC-1αの発現減少は軽減された。一方、偽手術脚のヒラメ筋では、間欠的温熱刺激によりリン酸化AktおよびHSP70の発現量が高まった(PGC-1αの発現については効果なし)にもかかわらず、Atrogin-1およびMuRF-1 mRNAの発現には温熱刺激の影響は確認されなかった。さらに、除神経および偽手術1日後のヒラメ筋において1回の温熱刺激の直後には、タンパク質合成を正に制御することが知られるAktおよびribosomal protein S6のリン酸化が亢進していた。以上の結果から、ヒラメ筋の形態に対する温熱刺激の効果は神経支配の有無にかかわらず得られるが、温熱刺激に伴う細胞内シグナルの変化は神経支配の有無により異なることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラット後肢への間欠的な温熱刺激による後肢筋(特にヒラメ筋)の形態へのポジティブな効果(肥大促進または萎縮抑制)は、筋を支配する神経の有無にかかわらず得られるが、温熱刺激に伴うタンパク質合成・分解に関わる細胞内シグナルの変化は、神経支配を受ける筋とそれを除去した筋では異なることを示唆する結果が得られている。また、徐神経に伴う骨格筋の機能的変化に対する間欠的温熱刺激の効果を評価する準備にも取りかかり、実験の条件検討も進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
徐神経に伴う骨格筋の機能的変化に対する間欠的温熱刺激の効果を評価する実験を実施する。これまでと同様に坐骨神経を切除した後14日の間に間欠的温熱刺激を行った個体と温熱刺激を行わなかった個体から摘出したヒラメ筋の収縮特性を比較し、温熱刺激による筋機能低下予防効果について検討する。また、本実験に使用したヒラメ筋からタンパク質を抽出し、筋の収縮特性を規定するタンパク質の発現量変化についても評価する。
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Causes of Carryover |
研究代表者の研究以外の業務のため、研究遂行に想定以上の時間を要した。また、実験に使用する試薬および装置を変更する必要が生じ、適切にデータを収集するための条件検討にも時間を要したため、年度内完了が困難となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に実施する実験に必要な消耗品の調達に使用する。平成28年度は、徐神経に伴う骨格筋の機能的変化に対する間欠的温熱刺激の効果を評価するとともに、筋の収縮特性を規定するタンパク質の発現量変化に対する効果についても評価し、骨格筋の恒常性の破綻を予防する処方として温熱刺激の有効性をより詳細に検討していく予定である。また、研究成果を論文としてまとめる際の英文校正や雑誌掲載等にかかる費用にも使用する。
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Research Products
(5 results)