2015 Fiscal Year Research-status Report
幼児期における動作の多様化と洗練化を図る運動遊びプログラム開発のための基礎的研究
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26750359
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Research Institution | Nishikyushu University Junior College |
Principal Investigator |
西田 明史 西九州大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (00369860)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 運動遊び / 幼児 / 跳び箱運動 / 技能獲得の特徴 / 技能構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
運動能力5項目の評定値および跳び箱運動6項目の技能成就度のデータを用いて、幼児期における跳び箱運動の技能獲得の特徴ならびに技能構造を検証した。運動技能の調査に用いたパフォーマンステストは、いずれも幼児体育の専門指導者が実践する運動遊びの年間プログラムを素材としている。分析、検証に使用したデータは、平成26年度に収集した5~6歳児569名(男児264名、女児305名)のものである。 Friedman検定の結果、幼児期における跳び箱運動の技能難度は、手足跳び移動>開脚跳び越し>支持跳びのり>踏み跳び>跳び降り>よじ登りの順に高かった。k-means法を用いた技能獲得タイプの類型化により、跳び箱運動に関する技能の「発達順序性」や「つまずきの種類・傾向」を検証した。その結果、跳び箱運動に関する技能の獲得は、よじ登り・跳びおり→踏み跳び→支持跳びのり→手足跳び移動→開脚跳び越しの順(方向)に進むことが明らかになった。 「開脚跳び越し」の技能成就度を目的変数、下位運動の技能成就度および運動能力の評定値を説明変数とし、数量化Ⅱ類を用いて跳び箱運動の技能構造を検討した。その結果、各下位運動および各運動能力が「開脚跳び越し」の成就度に及ぼす影響は、男児では立ち幅跳び>支持跳びのり>踏み跳び、女児では支持跳びのり>立ち幅跳び>両足連続跳び越しの順に強かった。幼児期における開脚跳び越しの成就度に関しては、跳躍により生み出された鉛直・水平方向の運動エネルギーを跳び箱の高さや長さに合うように調整するスキルがより重要だと言える。また、跳び箱運動の技能構造は男女で異なり、跳躍高・距離の調整の際、男児は助走から踏切・跳躍の一連の動作、女児は跳躍リズムと跳動作を用いていると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度では、平成26年度に作成したパフォーマンステストを用いて幼児期の運動遊びの技能成就度を調査した。また、MKS幼児運動能力検査(幼児運動能力協会)も併せて実施した。なお、測定時期については、研究に協力いただく幼稚園・保育所および幼児体育の専門指導者の取組状況に鑑み、9月下旬から10月下旬に運動能力検査、1月中旬から2月下旬にかけて運動技能成就度調査を実施した。 平成26年度に収集した跳び箱遊び6項目の技能成就度ならびに幼児運動能力検査5項目のデータを用いて、運動遊びの実践を通して獲得される運動技能の難易度、つまづきの種類や発達順序性などの跳び箱遊びの技能獲得の特徴、跳び箱遊びの技能構造について検証した。分析・検証したこれらの研究成果については、研究者が所属する学会において報告している。 平成26・27年度の研究成果に基づき、幼児期における総合的運動遊びプログラムの中核技能として跳び箱遊びの「開脚跳び越し」、鉄棒遊びの「逆上がり」を抽出した。キネマティクス解析を目的として、平成26・27年度に研究協力を得られた幼稚園・保育所の中から2ヶ所を選定し、年長児92名(男児36名、女児56名)を被験者として、開脚跳び越し・逆上がりの2項目を試技とする動作データを撮影、収集した。 運動技能成就度調査およびMKS運動能力検査のデータについては横断的・縦断的に検証する予定であったが、平成27年度に収集したデータについては現在分析の途中である。また、キネマティクス解析による運動遊びの技術構造の検証については、試技データの撮影までは済んでいるものの、現在は座標データを収集しているところである。したがって、研究の進捗状況については、収集した研究データの分析中であり、当初予定していた運動技能の発達傾向の検証までには至っていないため、「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に収集した運動能力検査および運動技能成就度調査のデータについては、平成26年度収集データと同様の解析法を用いて分析、検証していく。平成26・27年度に収集したデータの分析・検証結果に基づき、運動遊びの実践を通して獲得される運動技能の発達傾向(技能難易度、発達の順序性、つまづきの種類等)を明らかにしていく。運動遊びのキネマティクス解析に際し、2項目(開脚跳び越し・逆上がり)の試技の撮影データに加え、運動技能成就度調査により得たデータも考慮しながら、被験者を技能獲得タイプ別に分類する。その上で開脚跳び越しと逆上がりの2項目の運動技術(つまづきの種類や原因も含む)の構造を分析、検証していく。跳び箱・鉄棒・マットを用いた遊びにおける運動技能の発達傾向と開脚跳び越し・逆上がりの技術構造は関連性が高いと考え、二つの分析を並行して進めていく予定である。 本研究の主たる目的は、幼児期における動作の多様化と洗練化を図る運動遊びプログラムの開発のための基礎的知見を得ることである。そのため、運動遊びに関する技能の「難易度」「発達の順序性」「項目間の関連性」および中核技能の「技術構造」を検証し、それらから得た知見に基づいた系統性のある内容・方法を目指している。幼児および幼稚園教諭・保育士が運動遊びの実践状況(成就度含む)に合わせて、日々の活動の中で選択・展開可能な内容と方法を提案するためには、運動遊びの実践現場との研究成果の共有が欠かせない。したがって、分析結果の検証、検証により得た知見のプログラムへの活用の際には、幼児体育の専門指導者または幼稚園教諭・保育士との打合せ、および運動遊びの実践場面の観察を実施する。 以上の研究成果については、研究者が所属する学会において公表していく予定である。
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Causes of Carryover |
応募時に購入を予定していた物品を交付申請額内で調達する必要が生じたため、購入物品を他社製に変更せざるをえなかった(平成26年度)。その際に研究費を効率的に使用したため次年度使用額が生じている。平成27年度に使用予定であった物品費および旅費については、当初の支出予定額との差異があまり生じないように使用している。その他の項目で、実験機器・器具運搬に伴う費用、学会発表で使用する資料等(ポスターを含む)の印刷費を予定していたが、いずれも学内の設備等を使用したため支出が生じなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、平成26・27年度に収集した研究データ(運動技能成就度調査、MKS幼児運動能力検査、試技の撮影データおよび動作解析により得たキネマティクスパラメータに関するデータ)を保管するための情報記録媒体(DVD・外付けHDD)を購入する。研究成果に基づく運動遊びプログラムの開発に関して、幼児体育の専門指導者または幼稚園教諭・保育士による運動遊びの実践場面の観察、研究成果の還元の際に検証データを可視化する媒体(タブレット等)の必要性が生じたためその経費に充てる。研究成果の公表に際し、学会発表のほか、研究成果報告書ならびに研究成果広報用リーフレットを作成する予定であるため、それらの費用に充てる。収集したデータの統計的特性によっては、統計解析ソフトを購入する必要も生じる。
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Research Products
(3 results)