2015 Fiscal Year Annual Research Report
重症新生児の治療方針の意思決定権をめぐる政治学・政策学的研究
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26750360
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Research Institution | National Center for Child Health and Development |
Principal Investigator |
大西 香世 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, その他部局等, 研究員 (60727410)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 重症新生児 / ガイドライン / 22週出生児 / 新生児蘇生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、第1年度は、日本の新生児医療の現場における、重篤な疾患を持つ新生児への治療に関する「差し控え」および「中止」に関して、既存の「重篤な疾患を持つ子どもの医療をめぐる話し合いのガイドライン」(2012年)(「話し合いのガイドライン」)では何が問われてきたか、「子どもの最善の利益」とは何かについて、海外の事例と比較検討しながら、考察を進めた。その過程で、治療が過剰になった場合の弊害として、治療による副作用、子どものQOLの低下などが挙げられるが、子どもの最善の利益を尊重するためには、「積極的医療」、「制限的医療」、「看取り医療」といった多様な医療の選択肢が提示されていることが、先行研究レビューで明らかになった。
第2年度においては、「重篤な疾患を持つ子どもの医療をめぐる話し合いのガイドライン」(2012年)と「新生児心肺蘇生法ガイドライン」(2005年)の両ガイドラインを中心に、(1)重篤な疾患を持つ新生児への治療、および(2)22週出生児の蘇生(蘇生努力の差し控えあるいは中止の適応)に関する倫理的問題との比較検討から、新生児医療における両事例の倫理的問題の共通項を考察した。22週出生児の蘇生に関しては、現在、優生保護法における胎児の「生育限界」と新生児医療の現場での慣行との間の乖離が学界や医療現場において指摘されている。1991年に母体保護法(現優生保護法)が改訂されて以来、新生児医療の現場では、新生児に対する治療対象は、妊娠22週また23週で出生した児のみとしている一方で、妊娠23週から25週から26週に「生育の限界」があるみなされており、22週出生児への蘇生の対応が問題となっていることを指摘し、明らかにした。その上で、22週出生児の蘇生問題と重篤な疾患を持つ新生児の治療の差し控えあるいは中止の適応との整合性の有無を検討した。
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