2015 Fiscal Year Research-status Report
抗炎症化合物SMTP-7の脂肪肝改善作用におけるsEHとERストレスの寄与の検討
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26750362
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
鈴木 絵里子 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (00468513)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脂質代謝 / エネルギー代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでにSMTP-7が可溶性エポキシドハイドロラーゼ(sEH)阻害を介して、抗炎症作用を示すこと、また種々の動物モデルにおける優れた抗炎症活性はこのメカニズムに起因することを明らかにした。しかし、エネルギー代謝亢進や脂質代謝改善作用との関連性については未解明であった。そこで、今年度は、野生型およびsEHKOマウスにSMTP-7の断続的かつ長期的投与を行い、体温・その他代謝関連パラメーターの変動解析を行い、さらに肝臓RNAを用いて投与後に発現上昇する遺伝子をDNAマイクロアレイを用いて網羅的に解析した。 その結果、SMTP-7投与後に有意な体温上昇が認められ、また肝臓中遊離脂肪酸、トリグリセリドも野生型マウスにおいて有意に減少していた。摂餌量、体重、臓器重量には変動は認められなった。マイクロアレイの結果、脂質代謝および炎症に関わる遺伝子であるLnc2, Saa, Defb25を含む複数の遺伝子にSMTP-7の投与による大幅な発現上昇が認められた。それら遺伝子の大幅な発現上昇は野生型マウスにおいてのみ認められ、sEH KOマウスに置いては認められなかった。また、同様に野生型マウスへのSMTP-7の単回投与により遺伝子変動をqPCRにより確認したところ、再現性が得られたことから、SMTP-7は短期的および長期的・断続的な投与により、上記の遺伝子発現を正に調節していることが示唆された。尚、上記の遺伝子発現変動が、炎症惹起によるものではないことを確認するべく、マウスへのSMTP-7単回投与後の肝臓由来RNAを用いたqPCRによりTNF-alpha, IL-1beta, IL-6, MCP-1, MMP-9の発現変動を解析したところ、いずれも投与前後で変動が認められなったことから、アレイで得られた遺伝子発現変動は炎症の影響によるものではないことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
マイクロアレイの結果、期待していた通り、SMTP-7の投与後に脂質代謝関連の遺伝子変動が認められ、尚且つ炎症の影響による変動ではないことも確認できた。また、これら遺伝子の上流の転写調節について現在実験を行っていることから、当初の計画以上に研究が進行していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗状況にも記載の通り、現在は大幅な上昇が認められた遺伝子について、その上流の転写調節機構について解明していく予定である。具体的には、Lcn2についてまず取り上げ、promoter配列にbiotin修飾したDNAを合成し、肝臓RNAおよびstreptavidinビーズを用いてpull downアッセイを行い、SDS-PAGEに供した後にPMF解析を行い、当該遺伝子の転写調節に関与する転写因子を特定する。これを、野生型マウスおよびsEH KOマウスの肝臓RNAで比較することで、sEHの関与についても解明してく所存である。
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Causes of Carryover |
来年度は、マウスを用いた動物実験による検証が多くなると思われ、飼育・維持と動物実験に関わる費用を考慮した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
マウスを用いた動物実験による検証を行う。特に、炎症性パラメーターの増減に関して、綿密に検証を行っていく予定である。
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