2016 Fiscal Year Research-status Report
抗炎症化合物SMTP-7の脂肪肝改善作用におけるsEHとERストレスの寄与の検討
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26750362
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
鈴木 絵里子 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (00468513)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脂質代謝 / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、SMTPの有する抗炎症作用の標的分子であるsEHの有するN末端phosphatase活性阻害の意義は、血管内皮細胞における接着分子発現抑制を介した単球接着抑制活性等で示唆はされているものの、確証となる結果が得られていなかった。SMTP長期投与マウスとその対照群(生理食塩水投与)、SMTP長期投与sEH KOマウスとその対照群(生理食塩水投与)の4群の血漿を用いて行ったDNAマイクロアレイ解析の結果より、約63000遺伝子の内、SMTP投与群の遺伝子発現パターンが、sEH KOマウスの遺伝子発現パターンと酷似しており、尚且つKOマウスへのSMTP長期投与により変動する遺伝子はほぼ皆無であった。SMTP投与によりsEH KOと同等の遺伝子発現変動パターンがもたらされたことから、SMTPの作用はsEH-KOと同等と考えられる。一方、Cterm-EHの選択的阻害剤ではこのような作用が見られなかったことから、N末端phosphatase阻害の寄与が明確となった。さらに、SMTP投与により発現上昇する遺伝子の内、100倍以上の大きな増幅を認めた、Lcn2, Saaについて、SMTP単回投与により発現上昇が確認できた。また、初代培養肝細胞においても、SMTP添加により同様に上記の遺伝子発現増加を確認した。さらに、当研究室において発見された修飾アミノ酸のいくつかに、sEH N末端phosphatase特異的な阻害活性が見出されているが、これらの修飾アミノ酸のマウスへの単回投与によってもLcn2, Saaの発現増加が認められたことから、SMTPによるsEH阻害がもたらす表現型や生理的に有用な活性には、N末端phosphatase阻害が強く関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、DNAマイクロアレイ解析の結果が表現型とここまで一致するとは考えなかった。また、現在DAVID, Subio等のソフトウェアを用いて、発現変動遺伝子のcluster解析を行っており、関与するpathwayが絞り込まれた段階であり、予想以上の興味深い結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
N末端phosphataseの生理的基質は未同定であり、阻害剤の発見も立ち遅れていることから、我々は、sEHのC末端EH活性を欠く変異体およびN末端phosphatase活性を欠く変異体をそれぞれBrevibacillus expression systemを用いて作製し、これを用いて生体内総脂質の酵素反応を行い、反応前後にアルコールをdansylまたは重水素ラベルdansylで誘導体化、LC-MSを用いた検出により、N末端phosphataseの基質同定を急いでいる。
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