2014 Fiscal Year Research-status Report
免疫調節薬IMiDsにおける抗がん活性の分子機構の解明
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26750374
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
伊藤 拓水 東京医科大学, 医学部, 講師 (30533179)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | サリドマイド / セレブロン / ユビキチンリガーゼ / IMiDs |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究実施計画に基づいて、強力な細胞殺傷性を持つサリドマイド誘導体の一種、IMiD A1によりセレブロン(CRBN)との結合が誘導されたタンパク質X1-X3について、これらがCRBNユビキチンリガーゼの基質なのかどうかについての検証を行った。 質量分析の結果、X1,X3は同一因子で、X3はX1の分解産物か別のスプライス産物だったものと思われる。X2はX1結合因子として報告されているタンパク質であった。X1はレナリドマイドが誘導するCRBN基質として既に報告のある、転写因子Ikaros, Aiolosとは全く構造も生理的役割も異なる因子であることが報告されていた。過去の報告によるとX1をノックアウトしたりノックダウンすると細胞増殖抑制が生じることが判明している。 申請者は、まずIMiD A1によりX1の分解が生細胞で誘導されているかを検証した。X1タンパク質の減少は確かに誘導されており、X2の分解は見られなかった。またE3阻害剤、MLN4924で処理したところ、IMiD A1によるX1減少は抑えらえた。CRBNをCRISPRでノックアウトしたところ、IMiD A1による効果は全て失われた。293T細胞にHA-CRBNおよびX1-Myc-FLAGをトランスフェクションにより今日発現させ、HA抗体で免疫沈降を実施したところ、細胞抽出液にIMiD A1を処理した場合のみ結合がみられた。申請者は、複数の欠損変異体を用いて、X1のC末領域にCRBNが結合し、その領域のみのX1変異体でもCRBNが発現している細胞ではIMiD A1処理で分解されることも示した。申請者はそのC末領域にあるすべてのリジンをアルギニンに置換したK-less変異体を作製し、それがIMiD A1でもはや分解されなくなることを確認した。そしてさらにIMiD A1に感受性のある細胞にそのK-lessを発現させたところ、IMiD A1にある程度耐性になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IMiD A1の薬効の解析は大きく進んだ。IMID A1はCRBNユビキチンリガーゼにおいて細胞増殖に重要なタンパク質X1を分解する活性を誘導した。そして、X1が実際にIMiD A1の薬効と関わっているのかを明らかにするため、CRBNがX1のどこに結合するのかを明らかにし、さらにはその部分のリジンをアルギニンに全て置換することで非分解型変異体の作製に成功した。それを用いたIMiD A1耐性細胞の樹立も成功し、IMiD A1の薬効を担う主要な標的タンパク質がX1であることがほぼ判明したと言えるかもしれない。その点では、本年度だけで来年度、再来年度に計画していたデータもすでにいくつか出せたと言える。また今年度の意義は、申請者の考案した計画に基づいて解析を行うことで、確かにIMiDsの誘導するCRBN基質を単離・同定・証明できることが判明したことである。よってIMiD A1-X1研究という点では非常に卓越した成果をあげられていると言えるが、申請書にあるX4, X5のような別のIMiDsの基質候補の解析については、次年度以降に中心に行うこととなったので「おおむね順調」ということにした。
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Strategy for Future Research Activity |
IMiD A1の主要な薬効を担うCRBN誘導基質がX1であるという証明を終わらせるために、まずIMiD A1がX1以外に誘導することが知られている既知のCRBN基質、Ikaros, Aiolosを過剰発現させても、細胞がIMiD A1耐性にならないことを確認する。またCRBNによるX1のユビキチン化を試験管系で再現する。 その一方で、X4, X5が新たな別のCRBN基質がどうかを検証する。昨年度においてX1を証明するときに用いた手法をそのまま用いる。また、研究実施計画で挙げたような半田ビーズを用いた手法などを駆使して、X1-X5以外のCRBN基質の探索も行っていく。本研究の申請期間で、IMiDsによるCRBNの作用機構の理解はかなり進むという手ごたえは掴んでいる。
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[Journal Article] Structure of the human Cereblon-DDB1-lenalidomide complex reveals basis for responsiveness to thalidomide analogs.2014
Author(s)
Chamberlain PP, Lopez-Girona A, Miller K, Carmel G, Pagarigan B, Chie-Leon B, Rychak E, Corral LG, Ren YJ, Wang M, Riley M, Delker SL, Ito T, Ando H, Mori T, Hirano Y, Handa H, Hakoshima T, Daniel TO, Cathers BE.
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Journal Title
Nature Structural & Molecular Biology
Volume: 21
Pages: 803-809
DOI
Peer Reviewed
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