2015 Fiscal Year Annual Research Report
社会的行動学習における大脳基底核・ドーパミン系の役割
Project/Area Number |
26750379
|
Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
榎本 一紀 玉川大学, 脳科学研究所, 科研費研究員 (10585904)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 社会性 / 霊長類 / 報酬 / 意思決定 / 学習 / ドーパミン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、社会的状況における学習や意思決定、行動選択にかかわる神経基盤を明らかにすることである。複数の行動主体が相互依存的な関係をもつ状況では、他者の行動が自分の利益につながるなどの場合があり、数ステップ後の行動結果を含んだ、長期的な報酬予測が必要となる。そこで、1ブロック内で複数回報酬を獲得することを目的とする意思決定課題をニホンザルに学習させ、中脳から記録したドーパミン細胞の活動を調べた。過去に報告した通り、課題の学習が進むと、1ブロック全体(2-3回)の報酬情報を反映した活動が見られたが、オーバートレーニングさせると、更に長い、ブロックをまたいだ超長期的(4回以上)な報酬情報表現が見られることが明らかになった。 次に、複数頭のニホンザルを用いて、相互依存的な行動課題を学習させ、社会的状況においてドーパミン細胞の活動がどのように他者の行動や報酬獲得に影響を受けるのかを調べることを目的として実験を行った。この実験においてサルが学習する行動課題は、向かい合った二頭が報酬獲得のために交互に行動選択を行うもので、効率的に学習して多くの報酬を得るために、相手の行動とその結果の情報が有用な場合は、それを観察し、自己の行動に生かすことが必要となる。課題遂行中のサルの眼球運動や報酬(水)が出る口元のパイプへの舌なめ運動を記録したところ、相手の行動依存的に報酬が得られる状況では、自分が選択行動をしていない時においても、相手の手の位置や顔の周囲を注視し、報酬獲得を期待した舌なめ運動をしていることが確認でき、相手の行動を観察し、自身の行動に生かす戦略を採っていることが示唆された。このような状況で動物が用いている戦略(学習モデル)や神経活動を明らかにすることによって、社会のなかで適切な意思決定を行い、効率的に利益を獲得するための学習に関わる脳神経メカニズムの解明に貢献することが期待される。
|