2014 Fiscal Year Research-status Report
脳の機能的ネットワークにおける重要度の推定(宇野裕)
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26750384
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
宇野 裕 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (10610024)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 脳波 / 位相同期 / 機能的ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
脳波において各電極の信号はその電極近傍の大脳新皮質の活動の総和だと考えられており、脳波の位相同期は異なる二個の電極の近傍の皮質との間の情報のやりとりに関連すると考えられている。これまで脳波における位相同期ペアを調べることで、課題遂行時の情報の統合の様子を理解しようと試みられてきた。 本研究計画では電極ペア単体で情報統合を理解する代わりに、位相同期ペアによって構成されるネットワークグラフの構造から、情報統合における各電極の相対的重要度の推定法提案する。領野間の情報伝達のネットワークモデルから、脳の動的・機能的ネットワークにおける各脳モジュールの重要度を推定する方法である。
提案手法を用いて、種々の実験データを解析し従来の知見と比較することにより提案手法の妥当性と有効性を検証した。提案手法の妥当性を検証するデータを取得するため、注意誘発性のα波の調節実験と多義運動知覚を起こす視覚刺激を提示したときの脳波計測実験を計画した。Posnerパラダイムと呼ばれる注意課題を課したときにα波の強度が変化することはよく知られており、様々な先行研究が存在する。このときの脳波データを提案手法で解析し、すでにある知見と一致する結果が得られるかを検討した。
提案手法によって、前頭の電極付近で、視覚刺激に対する注意の変調に対応すると考えられる活動の可視化ができた。また、後頭の視覚野付近の電極では、ターゲットとなる視覚刺激を待つ間は、機能的ネットワークにおいては結合が弱まっていることが明らかになった。これらの結果を踏まえ、昨年度に特許の出願を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題遂行時の脳波の位相同期ネットワークにおける各機能モジュールの重要度を定量化する解析手法を確立し、提案手法の有効性を実証できた。
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Strategy for Future Research Activity |
通常の位相同期指標は二つの電極のペアで決定され方向はない。すなわち位相同期ネットワークは無向グラフとなる。一方、脳モジュールAからBへの情報の伝達と、BからAへの伝達が非対称な場合も想定できる。この点に関して、我々は脳波位相の伝搬に関する因果的指標として、TransferEntropy(TE)が利用できることを提案している。位相伝搬の時間的順序を考慮に入れることでTEは領野間情報伝達の非対称性を見ることができる。つまり位相同期のネットワークではなく、TEで測ることができる脳波位相の伝搬のネットワークにおける重要度を見ることで、領野間の情報伝達における送信側と受信側も含めた解析に拡張できるか検討する。
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Causes of Carryover |
研究成果の発表が予定より遅れてしまったから。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究成果の発表のための学会参加の旅費や、論文の校正、出版費の一部に充てる予定である。
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