2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26750387
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
池上 剛 独立行政法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳情報通信融合研究室, 研究員 (20588660)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 運動学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
新しい運動を学習するためには,目標を実現する運動計画と,その計画を遂行する運動指令を学習する必要がある.たとえ良い運動計画でも,計画通り実行されなければ目標は達成されず,計画通り実行されても,粗悪な計画では効率が悪い.故に,運動学習過程は,目標指向的な運動計画と,運動計画指向的な運動実行の2つの学習プロセスの両者に依存すると考えられる.申請者は,「運動学習は,課題が失敗した場合に更新される運動計画の学習プロセスと,運動計画の実現を目的とした運動指令の学習プロセスからなる階層システムによって実現されている」という階層的運動学習システム仮説を立てた.従来の運動学習研究は目標が常に達成される環境下において最適な運動パターンの学習過程を調べてきたが,この環境下では,運動実行のプロセスのみが活性化し,運動計画の学習プロセスが活性化しない.そこで申請者は,運動計画の学習プロセスを活性化させるために,失敗を誘起する力場運動学習課題を開発した.結果,失敗直後には,力場を過補償する程大きく軌道が修正された.さらに,脱学習過程において,力場なし環境下での運動が,学習前とは異なるある曲線軌道に収束することを発見した.仮説に従うと,これらの結果は,力場学習・脱学習過程で生じた失敗によって運動計画が変更された結果,同じ力場なし環境下にも関わらず,力場学習前後の到達運動が異なる運動計画によって生成されたことを反映していると解釈できる.実際に,従来の運動実行の学習モデルを下位階層とし,失敗に応じて更新される運動計画の学習プロセスを上位階層に追加した階層的運動学習モデルを構築して計算シミュレーションを行ったところ,実験結果を上手く説明できた.本研究結果は,我々の仮説を支持し,ヒトの運動学習過程が,目標指向的な運動計画と,運動計画指向的な運動実行からなる階層的学習システムによって生成されることを示唆する.
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