2014 Fiscal Year Research-status Report
インドネシア村落における建築木材の使い回しにみる長期型自然資源利用
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26760005
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鈴木 遥 京都大学, 総合地域研究ユニット, 助教 (40624234)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 東南アジア / インドネシア / 地域研究 / 自然資源利用 / 熱帯材 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、インドネシア東カリマンタン州沿岸集落において建築木材が世代を超えて使い回される仕組みの実態とその成立要因を、同国リアウ州の状況との比較を踏まえて明らかにすることを目標としている。 2014年度は、インドネシア東カリマンタン州とリアウ州の沿岸に位置する対象集落に各1ヶ月程度滞在し、木造住居の相続・売買と修理・建て替えに関して調査を実施した。現地調査では計100世帯に対する聞き取り調査、集落内の木造住居や人々の居住に詳しい地元大工や高齢者への聞き取り調査、そして役所における関連資料の収集を行った。
住居の相続・売買に関しては、調査世帯の多くは核家族世帯であり、現在暮らしている住居は自らが建築したものであった。多くの世帯は、結婚後集落内の数件の住居を住み継いでいた。住居の住み継ぎは、東カリマンタン州の集落よりもリアウ州の集落の方が顕著であった。彼らが複数の住居を住み継いでいる背景には、親族との関係や経済状況などがあると示唆された。両地域において住居は双系相続されており、未子相続もみられた。住居の売買や貸借については、親族間や隣人間での住居の売買や貸借は東カリマンタン州の集落においてより頻繁にみられた。また東カリマンタン州の集落では住民から新規移住世帯への住居の貸借が確認されたが、リアウ州の集落ではほとんど確認されなかった。
住居の修理・建て替えに関しては、両集落において2世代以上住み継がれている住居の多くは全面的に建て替えられていた。東カリマンタン州の集落では基礎材はほぼ取り替えられないのに対し、リアウ州の集落では基礎材は数年ごとに取り替えられていた。住居の修理については、屋根の取り替えが主に行われていた。また東カリマンタン州の集落では、住居の建て替え時に、約半量の建材が新居や隣人の住居の建材として再利用されていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたとおり、東カリマンタン州とリアウ州の両州において木造住居の相続・売買、そしてその中での修理・建て替えの状況を明らかにすることができた。加えて、来年度予定している長期利用された木材の腐朽や強度に関する分析の予備調査も実施し、調査の実施方法を検討した。また、来年度予定している調査対象世帯の社会経済状況に関する調査の準備として、役所における資料収集を進めた。このような点から研究が概ね順調に進んでいると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度明らかにした住居の住み継ぎ、住居の相続・売買、住居のメンテナンスなどの状況がどのような要因のもとどのように生じているのかを考察するために、来年度は、これらの背景と考えられる世帯の社会経済状況や親族間関係の変容、土地や住居などに関するローカルな制度・政策の動向、新規移住者の入植状況などについて重点的に調査する。また、長期的な利用がなされていた基礎材や再利用材を中心に、建材の強度や腐朽状況を科学的に評価し、建材の利用可能期間を考察する。これらの調査を東カリマンタン州とリアウ州の両対象集落において実施し、両集落の調査結果の比較を行うことにより、建築木材が世代を超えて使い回される仕組みの実態とその成立要因を考察する。
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Causes of Carryover |
追加の現地調査を実施するために前倒し請求を行ったが、調査費を抑えることができ残額が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度の旅費として使用する予定である。
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