2015 Fiscal Year Research-status Report
東南アジアの少数民族における祭祀植物の利用と地域景観形成に関する研究
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26760009
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大野 朋子 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (10420746)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 祭祀植物 / 紐 / ワタ / 魔除け / 植栽 |
Outline of Annual Research Achievements |
地域・集落景観が民族文化を背景とした植物利用の違いに伴う人間生活や住居周辺における植物の植栽配置によって形成されることを民族植物学的フィールド調査や文献調査などによって実証するため、27年度は、中国雲南省、沖縄先島諸島、インド南部で祭祀や呪術などにかかわる植物について現地調査を行った。これまでの調査から、タイに住むラフ族は、ワタを重要な祭祀植物として集落内に栽培していたことがわかっている。雲南省にもラフ族は生活していることから同様にワタの植栽並びに利用について聞き取りを行った。タイと中国ではラフ族の生活習慣に大きな違いがあったが、ワタで糸を紡ぎ、紐として手首に巻くことで災いを避ける行為は共通していた。雲南省でのワタの栽培については、現在も栽培している、あるいはかつては栽培していたという結果が得られたが、タイにおけるアカ・ラフ族のような祭祀は行っておらず、ワタの植栽について特別な意味はなかった。沖縄やインドでも祭祀に関わる植物は多く存在する。沖縄では、素材は異なるが、麻(苧麻)で紡いだ糸を手首や首に巻き、魔除けとしており、タイ、中国と共通する使用であることが分かった。苧麻は民家庭園で栽培されていた。インド南部のハイデラバードでは、紐の魔除けは無かったが、幸運を招くとされるマンゴーの葉は寺院や住居の入り口に飾られる事例を多く見ることができた。また、インドでもネパール同様にマリーゴールドが供花として多用されていたが、ネパールのようなマリーゴールドの色に対する区別は見られなかった。 これまでに得られた情報をまとめ、Ethnobotany Research and Applicationsに論文として公表し、『「中尾佐助 照葉樹林文化論」の展開ー多角的視座からの位置づけ』の一部を執筆した。また、編者として書籍のとりまとめをおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地の政情不安により取りやめたH26年度の中国雲南省での調査は、安全性に問題がないと判断できたH27年度に行うことができた。しかし、研究を進めるうえで重要な知見となると思われたネパールでの現地調査は、地震災害への不安からH27年度の渡航を取りやめている。代替え地として沖縄石垣島での調査やハイデラバードでの調査を行い、両地域で魔除け、祭祀に関わる植物を確認できたため、おおむね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
タイ北部での少数民族への聞き取りは概ね、網羅されているが、一部不足事項があるため、結果の精度を高めるために補足的な現地調査を行う。また、現地の状況を判断しながら、安全が確保されればネパールにおけるマリーゴールドの栽培の実態調査を行う予定である。これまで得られた情報を取りまとめて論文を執筆、公表を行う。
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Causes of Carryover |
26年度から引き続いて調査予定地の政情不安等による渡航地の変更、および調査日数の変更が行われたことにより研究費の一部を次年度に繰り越したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
不足したデータの補完のため、28年度は繰り越した予算と併せてタイ、ネパール(災害後の状況により渡航の変更あり)等での補足調査を行い、データの取りまとめに伴う人件費および英文校閲費、成果公表にかかわる経費を計上する。
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Research Products
(2 results)