2014 Fiscal Year Research-status Report
移住労働女性のこどもと宗教的禁忌に関する研究―インドネシア西ジャワ州を事例として
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26760017
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
平野 恵子 お茶の水女子大学, ジェンダー研究センター, 研究員 (50615135)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ジェンダー / 移住家事労働者 / 国籍法 / こども / インドネシア / シティズンシップ |
Outline of Annual Research Achievements |
1.送出し村における移住家事労働者世帯の出生未登録児の法的地位に関する実態把握:2006年のインドネシア改正国籍法は、それまでの国籍法が有していた家父長制的側面をある程度は排除することに成功している。父系主義であったこどもの国籍が父母両系主義に変更され、こどもは両親の国籍を自由に選択可能となり、両親が離婚した場合も現在の国籍とは無関係に両親の国籍を選択可能となった。さらにインドネシア人の母親の子供は、申請すれば必ずインドネシア国籍取得が認められると規定された。一方で、婚姻関係にないこどもの国籍取得にかかる実践は多岐にわたる。2013年女性移住家事労働者が出産したこども6000人に対し政府がインドネシア国籍を付与した事例は特例としての側面が強い。また、移住家事労働者送出しの地域では出生未登録状態のこどもが多数存在しているが、就学や進学時に両親の婚姻証明書提出を要することから、かれらの場合、十全な教育を受けられる環境に困難が生じる可能性がこれまでも移住家事労働者支援団体により指摘されてきた。今年度は、以上の改正国籍法が想定しえていなかった状況のうち、移住家事労働者世帯の出生未登録児の法的地位に関し、送り出し村であるインドネシア西ジャワ州チアンジュール県の山村で、形式的面接調査ならびに非指示的面接調査をおこなった。出生未登録児の法的地位については、仮説とは異なり実子としての登録が多くみられ、その過程で登録におけるジェンダー差が明らかとなった。男児と女児の実子登録率には8倍以上の開きがみられ、国籍付与における制度的ジェンダー差別が解消された現在でも異なる形態でのジェンダー差が明らかとなった。 2.資料収集:統計データの入手ならびに「改正国籍法」「こども保護法」の法令翻訳をおこなった。 3.研究会:文献講読研究会を3回開催し、本研究の理論的枠組みを検討する会をもった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フィールドワークがおおむね順調に進んだ。また法令の翻訳、文献研究会の開催など、当初予定以上の成果をあげることが出来ている。加えて、現地調査中に今後の研究遂行に必要なネットワーク構築をおこない、調査を実施する上でより強固な基盤を築くことが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度は、前年度からの文献調査を継続しつつ、現地調査を実施していく。まず前年度に実施した以下2点の補足調査をおこなう。1)形式的面接調査による、コミュニティにおける移住労働者世帯のこどもに関する実態把握ならびに、2)宗教組織への聞き取り。また、移住労働者世帯の未登録のこどもに対する非指示的面接調査を引き続き実施する。加えて、昨年度実施調査に関する研究会、学会等で中間報告をおこなう予定である。
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Causes of Carryover |
所属機関の変更が生じ、フィールドワークの予定を変更したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度8-9月実施のフィールドワークの期間を当初計画より長期とする。
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Research Products
(2 results)