2015 Fiscal Year Research-status Report
移住労働女性のこどもと宗教的禁忌に関する研究―インドネシア西ジャワ州を事例として
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26760017
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
平野 恵子 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (50615135)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 移住家事労働者 / 出生未登録児 / ジェンダー / 婚姻 / インドネシア / シティズンシップ |
Outline of Annual Research Achievements |
1.現地調査:2回の現地調査を実施した。 当初計画通り、①調査地の出生未登録児の実態把握ならびに、②当該児童の進学要件としての出生登録に関する学校関係者への聞き取り、③非嫡出子とイスラーム法に関する宗教指導者への聞き取り、④そして、児童に対する非指示的面接調査を実施した。以下、得られた知見を記す。 ①調査地は西ジャワ州で4番目に移住家事労働者の送出しが多い地域でジャカルタ近郊の避暑地に隣接している。チアンジュール県地方裁判所や宗教裁判所での聞き取りから、外国人観光客との契約結婚においても出生未登録児が多いことが明らかとなった。②各種学校への入学に必要書類の一つに出生証明書があるが、近年は、身分証明書がオンライン化されたことで、出生登録時の父親欄記載に別人を記入し申請書を作成する調査地での慣習が困難となっている。加えて、政府による出生登録や婚姻登録の推奨の結果、それまで調査地で進学する際には要求されなかった各種入学書類の提出が厳密化されることが多くなり、出生未登録児の進学条件は厳しくなっている。しかし前年度の調査で明らかとなったように、実子としての出生登録が多いことから先行研究で指摘されてきた進学を阻害する要因としての未登録の問題は当初の想定よりも少なかった。ただし、この実子登録に大きなジェンダー差があることに注目すべきである。③また、非嫡出子に関し何を禁止事項(Haram)と捉えるかで、調査地であるチアンジュール県南部と都市部では宗教指導者の解釈に大きな隔たりがあった。④児童自身への聞き取りから、出生時未登録の問題は、2012年の憲法裁判所決定を経て、先行研究で指摘されている国籍付与というよりも文化的シティズンシップの問題として捉えられるべきである。 2.成果報告準備 成果報告のための準備をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
異動により昨年度計画よりフィールドワークの時間を少し短縮せざるを得なかったものの、当初の予定以上に現地調査が進捗していることから、最終年度は調査期間を短縮し、成果報告や文献研究会の立ち上げなど、国内外のネットワーク構築に力を注ぐ。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、1, 2年目の調査結果ならびに5, 9月に予定している補充調査によって得られた知見を、9月、11月、そして12月に予定している国内外の学会、研究会において報告していく。
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Causes of Carryover |
調査期間の短縮並びに自宅等宿泊の割合が増えたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
成果報告や文献研究会の立ち上げなど、国内外のネットワーク構築。
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Research Products
(1 results)