2014 Fiscal Year Research-status Report
カンボジアにおける移住労働のジェンダー分析と帰還支援ネットワークに関する研究
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26760018
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
島崎 裕子 早稲田大学, 平山郁夫記念ボランティアセンター, 助教 (90570086)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 移住労働 / 人身取引 / カンボジア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、移住労働と人身取引の関係が複雑化するカンボジアに着目し、男女にもたらされる移住労働の構造的側面と状況的側面を比較分析することである。本年度は人身取引の被害が多様化し、構造が複雑化してきていることから、「移住労働と人身取引の連動性」を捉えた。移住労働者がどのような構造によって人身取引被害者へと転化していくのかを明らかにし、「移住労働」のプロセスにはどのような男女の差異があり、どのように搾取の構造へと組みこまれていくかを可視化させることを目的とした。 本年度は年2回(雨季、乾季)の現地調査を遂行した。現地調査では、これらの問題を専門として活動している国際機関、NGOにインタビューを行い、現地NGOの協力のもと、移住労働者の多い農村、ならびに国境地域での実態調査も実施した。これらの実態調査では、越境地における移住労働者の社会環境を把握するとし、移動形態、居住形態、移住労働者の個別世帯状況や人的ネットワークなどの類型化を行った。 従来は、被害当事者が移住労働を決心するその時点から騙され、本人の意思や約束とは明らかに異なる状況に置かれ、強制労働をさせられ、保護を求めるといった可視化しやすい状態で人身取引が発生していた。しかし昨今では本人はいつの時点で、人身取引という構図に巻き込まれたのか、判断しにくい形態が見受けられ、移住労働者は容易に人身取引の被害者へと転化する社会環境に置かれていた。したがって、移住労働者のなかには、人身取引の潜在的被害者が水面下に置かれている現状にあった。これらの背景には、移住労働という名の下に複雑化し、かつ巧妙に人々を搾取していく構図が存在した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書に従って研究を遂行できた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、男女の社会環境の比較分析の研究を推進し、移住労働者が置かれている構造的側面と状況的側面を捉え、要因分析や状況分析を行う。移住労働へと導く要因分析では、「年齢」「コミュニティ要因」「人的ネットワーク要因」「家族要因」「経済要因」など多面的に分析を行う。また移住先での状況分析では、「労働形態」「居住状況」「雇用環境」「コミュニティ資源」など複合的な視点から分析を実施する。男女双方にもたらされる移住労働ではあるが、ジェンダーを起因とした問題や特徴、脆弱性などを明らかにすることを試みる。
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Causes of Carryover |
今年度の現地調査では、広範囲に及ぶアンケート聞き取り調査は実施せず、調査協力費、人件費の使用に至らなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は農村調査地において地元住民らに対するアンケート聞き取り調査を遂行するため、そこで調査協力ならびに人件費として使用予定である。
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