2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26770003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松浦 和也 東京大学, 人文社会系研究科, 助教 (30633466)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 哲学 / アリストテレス / 科学史 / 方法論 / パイノメナ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はアリストテレスと先行する自然哲学的諸見解の関係の基本構造を解明するためにアリストテレスの方法におけるパイノメナ(phainomena)に着目した。先行研究の多くが適切に指摘しているようにパイノメナは「現象」とも「通念」とも理解される。本研究はこの用語に関し、著作中の用例と議論展開上の位置づけを精査した結果、以下の理解を得た。パイノメナが現象とも通念とも理解される多様性を持つことをアリストテレスは自覚している。ただし、彼は通念的パイノメナよりも現象的パイノメナの方に高い真理値を置く。彼は、通念的パイノメナにそれと関連する現象的パイノメナを説明する能力を求め、ある通念的パイノメナがこの能力を持たない場合はその通念的パイノメナを却下する。その一方で、現象的パイノメナ自体の妥当性を検討する姿勢は見られない。また、2つのパイノメナは階層構造を有している。通念的パイノメナは現象的パイノメナの集積によって成立し、この意味では現象的パイノメナは通念的パイノメナの基盤となっている。このような態度はアリストテレスの自然哲学的考察にあまねく確認できる。 また、本年度はインド哲学との専門家の間で普遍と個体概念の関係を巡って討議する機会を得た。この討議から、本研究の方法論に関連する次の示唆が得られた。ある領域に関する理論の差異はその理論によって説明しようとする射程や目的の違いによって生じることがある。この示唆は、おそらくアリストテレスと先行する自然哲学的諸見解の解明にも有益なものだと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アリストテレスの議論方法に関わるテキストおよび先行研究の調査と整理に想定以上に時間を取られた上、研究代表者の体調不良が重なり、アナクサゴラスらの自然哲学に関わる研究は具体的成果を結ぶまでに至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究実施計画からはやや遅れが見られるが、幸いなことに必要資料は充実してきたので、今年度は研究の速やかな進行が期待される。
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Causes of Carryover |
旅費の支出が執行計画より少なかった。その理由としては、研究代表者の体調不良と学会や研究発表の研究代表者の所属機関付近で行われるものが多かったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は想定された使用計画(特に旅費に関し)に即した執行を行う予定である。
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