2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26770004
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
太田 紘史 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (80726802)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 道徳直観 / 道徳心理学 / 道徳認識論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究計画に即して、引き続き直観的な道徳判断に関する心理学的知見のメタ的検討を行うとともに、それが持つ道徳認識論的問題との接点についての理論的研究を行った。とりわけ今年度の研究においては、道徳直観の信頼不可能性にまつわる認識論的論証の再構成、およびそこで関わる経験的知見と非経験的想定の特定を試みた。 この研究を通じて検討したのは、(1)直観的な道徳判断が単なる感情的反応ではなく複合的な表象処理に基づいて生産されるという論点、および(2)道徳直観の信頼不可能性について結論づけるためには、直観的判断を生産するプロセスにおける運用上の干渉でなく能力上の不合理性を示さなければならないという論点の明確化である。これらの論点を押し進めるため、倫理学理論において展開されてきた道徳直観にまつわる諸説(理性・感情・知覚との類比)を考察するとともに、心理学的研究において見いだされている道徳直観への様々な干渉要因(言語表現、呈示順序、気分操作等)についての考察を行った。以上の検討の概要については口頭発表で報告し(日本心理学会第79回大会)、またその詳細については学術図書のブックチャプターにて発表する予定である(近刊)。 さらに道徳判断の特殊例として、道徳的責任と自由意志に関する認識に焦点を合わせた考察を行った。とりわけ、自由意志信念を構成する心理的要因について哲学的な自由意志論の観点から分析を試みた。これらの研究成果は、学術誌上での論文として発表された(『社会心理学研究』vol.31および『パーソナリティ研究』vol.24)。
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