2014 Fiscal Year Research-status Report
経験的・非経験的アプローチを総合した民間心理学の社会的機能の分析
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26770006
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
笠木 雅史 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD) (60713576)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 民間心理学 / 概念の社会機能分析 / 実験哲学 / Knobe効果 / 信頼 / 国際情報交換 イギリス、アメリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
「経験的・非経験的アプローチを総合した民間心理学の社会的機能の分析」という本研究の目的を達成するために、昨年度は主に以下の2つ研究を行った。(1)「意図的に行為する」、「意図する」、「信じている」、「知っている」などの判断について、研究協力者との共同で実験哲学の手法を用いた実験を行なった。(2)「信頼する」という心的状態の社会生活における倫理的、認識論的機能を分析するとともに、研究協力者と共同でコンピューターシミュレーションを用い、信頼関係の成立の発生条件についての研究を行った。 (1)についてより詳しく記述すると、何らかの意味で悪い帰結を持つ行為はある種の心的状態が帰属される傾向が高まるという、いわゆるKnobe効果について様々な条件で実験を行い、新しい発見や従来欧米で見られたのとは異なる結果もえられた。この点は近く国際学会で発表される予定である。(2)の研究は、いまだ萌芽的な段階であるが、国際学会で発表され、学会のproceedingsが書籍として出版された。しばしば最適な帰結を持たない可能性が高いにも関わらず、他者を信頼するという選択を人々が行うことが合理的か否かが社会科学では議論されており、信頼の発生についての研究は、行為を合理化する以外の民間心理学の機能の解明につながると期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の計画時における目標は、民間心理学研究における伝統的な非経験的方法と最近の経験的方法を総合しつつ、民間心理学の機能を分析するというものであったが、本研究内で実際に経験的方法を用いた研究を行うことは意図していなかった。しかし、研究協力者の協力をえて、実験哲学という経験的手法による研究を行うことができるようになったため、実際に実験を行い、研究上予想以上の進展があった。 しかしその反面、従来計画されていた非経験的方法による最近の民間心理学研究について理解を深め、その方法論を経験的探求の方法と総合するという方法論的研究については若干計画より遅れることとなった。しかし、研究計画に記した民間心理学の哲学的分析の創始者であるW. Sellarsの哲学については研究は順調に推移しており、また概念の社会的分析についても、近年の文献はある程度読み込むことができた。このため、本研究はおおむね順調に進展している。 また、Knobe効果についての海外の研究者との交流も初めており、計画されたとおり国際的な研究として、本研究は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はまず、昨年実施した実験で見つかった問題点(シナリオの翻訳、尋ねる質問の種類や尋ね方)を改善し、追加実験と新規の実験を行う予定である。何故なら、Knobe効果は国際的な比較実験が比較的多くなされているとはいえ、アジア圏内ではまだ数が少なく、行われた実験も限定的なものに留まっているため、より多くの実験が必要であるからである。Knobe効果は、広範な範囲の心的状態の帰属に対して、様々に異なる条件下で生じることが知られている。日本での実験を繰り返し、従来の欧米での実験結果と比較しつつ、Knobe効果の文化間で不変の部分と可変的な部分を解明することを目指す。 概念の社会分析を日本で行う際の困難な点は、欧米と様々な社会的条件が異なるため、分析を一般化したり、欧米の分析を参照することが難しいということである。上述の実験を通じ、心的状態の帰属についての不変の部分を抽出することで、どの部分に関して一般化が可能であり、また異文化の分析と共通点を見いだせるかを明確にすることで、この難点に対処していくことを計画している。 こうして実験哲学という経験的手法に依拠しつつ、概念の社会分析の難点を回避することで、民間心理学についての経験的手法と非経験的手法の総合という本研究の目的を達成することができると予測する。
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Causes of Carryover |
本研究の計画時に予定されていなかった心理学実験を行うことができる状況になったが、実験のスケジュールの都合上、1部の実験が年度内に行うことができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越した金額と合わせ、実験を複数回実施するさいの参加者への謝金として使用する。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Trust and Artifacts2014
Author(s)
Fabio Dalla Libera, Masashi Kasaki, Yuichiro Yoshikawa, Tora Koyama
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Journal Title
Frontiers in Artificial Intelligence and Applications, Sociable Robots and the Future of Social Relations, Proceedings of Robo-Philosophy 2014
Volume: 273
Pages: 231-240
DOI
Acknowledgement Compliant
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[Presentation] Trust and Artifacts2014
Author(s)
Fabio Dalla Libera, Masashi Kasaki, Yuichiro Yoshikawa, Tora Koyama
Organizer
Robo-Philosophy 2014: Sociable Robots and the Future of Social Relations
Place of Presentation
Aarhus University(デンマーク)
Year and Date
2014-08-22
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