2015 Fiscal Year Annual Research Report
経験的・非経験的アプローチを総合した民間心理学の社会的機能の分析
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26770006
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
笠木 雅史 京都大学, 文学研究科, 研究員 (60713576)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 民間心理学 / 意図性 / 意図的行為 / 信頼 / ノーブ効果 / 副作用効果 / 機械倫理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は昨年度に引き続き、実験経済学を専門とする研究者の協力の下、「意図的行為」、「知識」、「信念」などの心的状態の帰属について実験を行なった。また、「信頼」について、哲学、社会学、経済学、心理学といった多くの分野の研究をサーヴェイし、その機能について一定の見通しをえることができた。以下、本年度の研究でえられた成果について、具体的に述べる。
A. 意図的行為の帰属は、その行為の結果の良し悪しによって変化するというKnobe効果は、日本語、中国語でも生じるという実験結果をえた。この実験結果は日本語では数回追従実験を行ったがすべて再現されたため、強固なものである。一連の実験では、さらに以下の成果がえられた。まず、従来の英語での先行研究で報告されているのとは異なり、日本語では道徳的な良し悪しよりも、慣習的規範、共同体規範を順守する・違反するという意味での良し悪しの方がKnobe効果に大きく影響する。そして、日本語での意図性判断は、実験参加者が共同体主義、日本人気質を持っているかという心理尺度の得点と相関が見られない。これらの成果は海外学会で複数回の発表を行った。 B. 多くの分野の信頼研究を分析すると、信頼の必要条件は、相手が特定の行為を行ってくれるだろうという期待と、その行動が自分の関心の理解から生じるだろうという信念だと考えられていることが分かった。また、信頼の社会的機能は、裏切られるリスクを無視することによる社会の単純化・安定化と考えられていることも分かった。これらの分析結果を用い、従来考えられてきた人対人の信頼関係だけでなく、今後の社会の単純化・安定化に欠かせない人対機械の信頼関係にも、信頼の必要条件である期待と信念を強化する社会構造が重要であるという知見をえた。これらの成果も国内外の学会で複数回発表された。
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Research Products
(10 results)