2015 Fiscal Year Research-status Report
アリストテレス倫理学における道徳知覚とその現代的意義の研究
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26770007
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
立花 幸司 熊本大学, 文学部, 准教授 (30707336)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アリストテレス / 徳倫理学 / 道徳知覚 / 教育 / 脳神経倫理学 / 宇宙 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の研究課題は「アリストテレス倫理学における道徳知覚とその現代的意義の研究」である。この課題は、アリストテレス倫理学のもつ優れたアイデアの一つである「道徳的事実を把握する〈道徳知覚〉」という考え方について、(1)その内実を明らかにし、そして(2)その考え方が現代においてもつ意義を解明すること、の二つである。 そこで本年度は、まず(1)について、「道徳知覚」のアイデアが示されているアリストテレス倫理学の主著とされる『ニコマコス倫理学』の研究に従事した。そしてその成果として、『ニコマコス倫理学』のあらたな翻訳を刊行した。また、道徳知覚をその徴表の一つとする「徳」がどのように学ばれるのか、またその学びについてどのように研究が可能なのかについて、研究史を辿りながら論じた論文を二篇刊行した。また、関連する研究発表を日本倫理学会の主題別討議においておこなった。 ついで(2)について、道徳知覚のアイデアを含む(アリストテレス由来の)徳倫理学が現代にいたるまで経てきた変遷と現代における影響力の多様性を、日本倫理学会における「徳倫理学ワークショップ」において企画し、医療倫理における徳倫理の意義として検討した。また、医療倫理への貢献を含め、徳倫理学の現代的意義を網羅的に論じた『ケンブリッジ・コンパニオン 徳倫理学』を監訳し、刊行した。また、徳の習得と発揮の研究のありかたについて、脳神経科学や宇宙医学との接点の可能性を論じた共著論文を二篇著した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
解釈研究および現代的意義の研究のそれぞれについて研究が進み、それぞれにおいて論文・翻訳・研究発表を行うことができたので、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画のうち順序違いになったものや研究のなかでみえてきた新たな展開などをふまえつつ、研究のペースを適宜調整し、おおむね当初の研究計画の通りに実施することにより、今後の研究を推進することとする。
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Causes of Carryover |
研究計画において拠出することが予定されていたもののうち、物品については研究の進展により必要となった書籍等により予定よりも拠出されたが、そのぶん、旅費の一部については計画的な予約等により全体として費用を安く抑えることができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
アリストテレスの道徳知覚概念とその意義を検討するために、英国での資料調査および米国での研究発表を計画している。
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