2014 Fiscal Year Research-status Report
論理学的手法を用いた自然言語推論と図形推論の統合的研究
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26770009
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
峯島 宏次 お茶の水女子大学, シミュレーション科学教育研究センター, 特任講師 (80725739)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 自然言語推論 / 図形推論 / 形式意味論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、論理学・言語学・認知科学の手法を組み合わせることにより、自然言語推論と図形推論を統合的に分析する論理的枠組みを構築することを目的としている。研究代表者によるこれまでの研究で、比較的単純な量化・関係推論に対する一定の研究成果が得られたが、これを十分な表現力をもつ範囲まで拡張し、さらにその枠組みのもとに自然言語に特徴的な文脈的推論のメカニズムをとりいれることで、人が自然に行う推論を包括的に分析する枠組みを構築することを目指している。 研究第一年目の今年度は、図形推論と自然言語推論の研究を並行して進め、その成果の一部を英語論文としてまとめた。 (1) 図形推論の研究として、論文 "Towards explaining the cognitive efficacy of Euler diagrams in syllogistic reasoning: a relational perspective" において、図形表現を図的対象間の関係に基づいて定義するアプローチ(関係的アプローチ)を発展させた。 (2) 自然言語推論の研究として、論文 "Resolving modal anaphora in dependent type semantics" において、自然言語に特徴的な照応・前提現象とモダリティ(様相)がかかわる含意関係を共に扱う証明体系を発展させた。 この他、型理論の観点から自然言語推論を扱う基盤となる論理体系の研究を進め、またその応用として日本語意味論の研究を行った。その成果に基づいて招待講演を3件行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績(1)で示した論文は、図形推論に対する論理学的・認知科学的アプローチを融合させた研究という点で方法論的な新しさがあり、また、基本的な自然言語推論(量化推論)とオイラー図に基づく図形推論に共通する制約に着目して、言語的推論と非言語的推論を包括的に分析することを目指した研究として、自然言語推論の研究に新しい視点をもたらすものである。この論文は、図形推論の分野で国際的に権威のある Journal of Visual Languages and Computing誌に掲載され、図形推論の研究領域に対する貢献も極めて高いと考えられる。 また、これと並行して、研究実績(2)で示した論文を中心に、自然言語推論の研究として当初予定していた前提・照応による文脈的推論の研究、及び、様相(モダリティ)にかかわる推論の研究を進展させることができた。いずれも、当初の研究目的に対する一定の達成度を示している。
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Strategy for Future Research Activity |
図形推論の研究としては、図形による関係推論の研究をさらに進展させ、オイラー図を典型とする従来の図形表現を超えて、Linear Diagramなどより幅広い図形表現に基づく関係推論を検討する予定である。この図形推論の研究は、自然言語の量化・関係推論の論理学的研究と並行して進めることで、より大きな成果が期待できる。自然言語推論の研究としては、これまでの型理論の枠組みでの成果をふまえて、自然言語のより広範囲の推論を扱うために、前提・照応などの文脈的推論を中心に研究を進める予定である。
これらの研究の成果の一部は、国際学会・国内学会での発表、論文誌における出版という形で順次発表していく予定である。特に、前提推論に関する研究成果は、6月にフランスで開催されるイプシロン計算の国際会議 (Epsilon 2015)、及び、8月にスペインで開催される European Summer School in Logic, Language and Information (ESSLLI 2015)の併設ワークショップ (Type Theory and Lexical Semantics)での発表が予定されている。
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Causes of Carryover |
当初予定していた国際学会への投稿・参加の計画を一部見直したことにより、次年度使用額が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、すでに受理されたものを含めて、国内学会・国際学会での研究発表、及び、コンピュータ等の購入を予定している。
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Research Products
(9 results)