2016 Fiscal Year Research-status Report
技術者の責任と環境配慮義務に関する研究:工学倫理と環境倫理学の両面的アプローチ
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26770018
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Research Institution | Kurume National College of Technology |
Principal Investigator |
藤木 篤 久留米工業高等専門学校, 一般科目(文科系), 講師 (80609248)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 公衆衛生 / 環境保全 / 相反 / 工学倫理 / 環境倫理学 / 専門職倫理 / 保全医学 / 公衆優先原則 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、「研究の総括と成果報告」との位置づけを与え、研究成果報告に向けたとりまとめを行った。これまでの研究の結果、明らかになったことは、主に次の二点に集約される。 1.技術者の責任の一端をなす環境配慮義務は、「公衆の安全・衛生・福利」を最優先に考慮すべしという公衆優先原則との間に相反問題を生じさせうる。例えば、わが国における日本住血吸虫病対策事業において、かつて重篤な寄生虫病の根絶を目的として、大規模かつ不可逆な環境改変を伴いながら中間宿主の巻き貝を人為的に絶滅させた。公衆優先原則が配慮対象のひとつに含む「公衆衛生」が、 環境配慮義務との間に相反問題を生じさせうることを示唆する一例である。 2.環境配慮義務をどの程度重視するかは、他の価値規範との関係性や現実の状況に応じて相対的に変化する。例えば、「環境改変を伴う公衆衛生的介入」を想定した場合、介入初期とそれ以降の段階では、公衆優先原則と環境配慮義務の重み付けは異なってくる。緊急性も重大性も高い初期段階では、前者は後者に優先される。しかし介入が功を奏し、対策の過半が感染源の撲滅といった積極的制御から治療・予防へと移行した段階においてもなお、同じ関係を保てるとは限らない。したがって、「環境に対し、技術者はどこまで配慮すれば専門家としての責任を果たしたことになるのか」という問いに対しては、環境配慮義務と実際の配慮の度合いのみをもって測定・判断することは困難である。 以上の調査結果をもとに、最終年度は研究成果の報告と公開を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度からの遅れを取り戻し、ほぼ当初の研究計画通りに調査を進めることができているため。一方で、研究成果の発表・公開にやや遅延が生じていることから、研究プロジェクト全体の完遂までには至っていない。したがって、最終年度となる次年度は、研究成果の報告を中心に行う(本研究課題は、補助事業期間の一年の延長を申請し、承認されている)。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究活動を通じて入手した資料の整理・分析をさらに推し進めつつ、その成果については順次文章にまとめ、査読付学術雑誌に投稿していくつもりである。
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Causes of Carryover |
研究成果の発表・報告に遅れが生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究用資料の購入および研究成果の発表・報告に使用する予定である。
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