2014 Fiscal Year Research-status Report
ユダヤ・ルネサンスにおけるニーチェ受容と自由ユダヤ学院の思想史的研究
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26770036
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Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
佐藤 貴史 北海学園大学, 人文学部, 准教授 (70445138)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | フランツ・ローゼンツヴァイク / マルティン・ブーバー / ニーチェ / 生の哲学 / 自由ユダヤ学院 / ユダヤ・ルネサンス / 超人 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、フランツ・ローゼンツヴァイクとマルティン・ブーバーのテクストを、「対話の思想家」や「人格主義の哲学者」とは異なる角度から読み込むことを目的としながら、研究を進めた。その過程で2つの特筆すべき成果が得られた。 1.しばらく中断を余儀なくされていた単著の執筆が科研費による研究支援によって大幅に進み、脱稿することができた(出版は2015年度予定)。そのなかでは本年度の研究目的であったローゼンツヴァイクとブーバーによる特異なニーチェ受容の解明だけでなく、カール・レーヴィットがみずからの戦争理解とニーチェを結びつけ、また当時のユダヤ教のラビたちがニーチェの思想を限りなく自分たちの立場に引き付けながら、ユダヤ教の再興のために用いようとしていたという思想史的事実を突き止めることができた。当初の計画通り、多くのユダヤ人たちがニーチェの「正しい解釈」ではなく、ニーチェの思想に自分たちの立場を上書きしていくことに専心していたことがわかった。 2.本研究の「研究計画調書」を提出したのち、2014年10月にフランクフルト大学で国際ローゼンツヴァイク学会(Internationale Rosenzweig-Gesellschaft)が開催されること、また学会の共通テーマが本研究とも一致するローゼンツヴァイクの自由ユダヤ学院や教育観をめぐるものであることが判明した。本研究を順調に遂行するためにも国際学会への参加は不可欠と考え、国際ローゼンツヴァイク学会において「フランツ・ローゼンツヴァイクの教育プログラムと政治」(ドイツ語)について発表を行なった。最先端のローゼンツヴァイク研究者の発表を聞くことができ、意見を交換することもできた。結果的に本研究の遂行にとってきわめて貴重な経験ならびに研究成果を得ることができたと総括できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していなかった国際ローゼンツヴァイク学会への参加ならびに研究発表と単著の完成(脱稿)は予想以上の成果だったと判断できる。これに加えて、これまで注目されてこなかったレオ・シュトラウスのフロイト理解と政治的シオニズムの関係について論文を執筆し、また政治哲学研究会においてシュトラウスの名著『自然権と歴史』に暗い影を落としている「歴史主義の問題」について発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画にしたがって研究を進める。とくに「ユダヤ教学の大衆化」と自由ユダヤ学院の関係、政治的行為としての自由ユダヤ学院の内実について考察する予定である。また、その成果を宗教学会等で発表することも計画している。
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Causes of Carryover |
当初の予定よりも物品費が若干ではあるが節約できたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の物品費(関連図書の購入)に組み込むことを計画している。
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