2014 Fiscal Year Research-status Report
障害者の芸術表現における美学と身体観の系譜に関する研究
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26770039
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Research Institution | Higashi Nippon International University |
Principal Investigator |
田中 みわ子 東日本国際大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (10581093)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 障害者アート / 身体 / 芸術 / 即興性 / 障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、障害者アートの実践において提示されている「美学」の系譜を辿りながら、障害者の芸術表現がどのように形成され、そこにどのような身体観の変遷がみられるのかについて、実証的かつ理論的に調査分析を行うものである。本年度は、分析枠組みを明確にすることを目指し、障害のある身体観に関する文献研究を中心に取り組んだ。 障害者アートには「アール・ブリュット(生の芸術)」や「アウトサイダー・アート」と呼ばれる美術界の潮流がある。本研究が注目したのは、それらの潮流と結びつきながらも異なる芸術を提唱してきた、ベルギーの知的障害者による芸術団体クレアムの実践である。知的障害者の芸術表現は、美術教育の外部や社会的周縁に位置づけられ、孤独で無垢な表現と結びつけて論じられてきた背景がある。クレアムの芸術は、他者との関係性やコミュニケーションの「失調」とみなされてきた知的障害者の表現のありようを、芸術表現における「美」と結びつけ、身体観の変容をもたらすものである。そうしたクレアムの実践を、障害学や障害当事者の運動の文脈のみならず、より広範な社会的、文化的、政治的、思想的文脈のせめぎあう場として捉える視点の獲得につとめた。次年度に実施する実地調査を踏まえたうえで、障害者の芸術表現における「美学」の創出過程に介在している指導者や支援者の役割を指摘し、それが従来の「美」のありようのみならず、「身体観」にも働きかけ、それをかく乱し、変容させるものであることを研究成果としてまとめる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、障害者の芸術表現における美学が、表現の創造現場における人々の相互関係性の中から創出形成されていることを示し、そのような美学が障害者アートの潮流において重要な役割を果たしていることを明らかにすることである。研究実施計画に記載した内容の一部を変更したことにより進捗状況はやや遅れているが、本研究の目的を順調に達成しつつある。 これは、当初予定していた実地調査を次年度に延期し、実地対象となる芸術団体に関する文献資料の分析および障害のある身体や芸術表現に関する文献研究を優先させたことによる。身体の「即興性」と他者との「共犯性」が「美学」の創出につながるとの見解が得られたことが今年度の成果であり、次年度においてミクロな表現の創造現場の分析と統合させていくことが課題となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の文献研究で得られた分析視点をもとに実地調査を行い、分析・解明作業を進める。知的障害者の芸術実践の場に着目することにより、①芸術表現の「美」をどこに見出しているのか、②どのようなかたちで介入や指導を行っているのか、③それは従来の知的障害者の芸術表現への意味づけどのように異なっているのかという点を明らかにする。絵画、音楽、ダンス、音楽などの領域にわたって共通する「美」と「身体観」を浮き彫りにしつつ、その結果を今年度の文献研究の成果と統合させていく。 具体的な方策としては、研究会での研究報告、調査関係者へのフィードバック、研究成果を公開していくために当該分野の研究者および実践者との意見交換を行い、論文としてまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
実地調査を次年度に延期し、文献研究を優先的に実施したことによる。国内旅費および外国旅費として計上していた研究経費の一部については、先行研究および関連資料の購入に充てたほか、調査に必須となる電子辞書および記録用の消耗品等の購入に使用した。次年度の調査のために必要となる費用について差額が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実地調査費用として使用する。
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