2015 Fiscal Year Annual Research Report
障害者の芸術表現における美学と身体観の系譜に関する研究
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26770039
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Research Institution | Higashi Nippon International University |
Principal Investigator |
田中 みわ子 東日本国際大学, 福祉環境学部, 准教授 (10581093)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 障害者アート / 知的障害 / アウトサイダー・アート / 即興的身体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、障害者アートの実践において提示されている「美学」の系譜を辿りながら、障害者の芸術表現がどのように形成され、そこにどのような身体観の変遷がみられるのかを探究するものである。研究期間全体を通して本研究では、1980年代以降ベルギーを中心に展開していた障害者アートのひとつの潮流に焦点を当てることによって、芸術表現における「美学」が、知的障害のあるアーティストと、アニマトゥールと呼ばれる芸術実践の指導者との共犯的な関係性から生まれていること、そしてアニマトゥールはアーティストの「即興的身体」に彼らの創造性を見出していることを明らかにした。 最終年度である平成27年度は、ベルギーの知的障害者による芸術団体「クレアム」の実地調査に赴き、参与観察および聞き取り調査を重点的に行った。調査の結果、クレアムが提唱した「アール・ディフェランシエ」と、主に美術史などの芸術分野における「アール・ブリュット」や「アウトサイダー・アート」の潮流との異同が明らかになった。くわえて、芸術表現の創造現場において、「能動」と「受動」の間の領域に生起する「即興的身体」が、クレアムの「美学」の中核となっているという見解も得られた。これらの成果を、11月3日に開催されたリベラルアーツ研究会(於NPO法人自然生クラブ)、および3月26日に開催されたシンポジウム(於筑波大学)において報告し、研究者や障害者アートの関係者と意見交換を行った。 現在、障害学において英米を中心として論じられてきた障害者アートの潮流と、美術史などの芸術分野において論じられてきた「アール・ブリュット」「アウトサイダー・アート」の潮流を相対化するかたちで本研究の成果を論文としてまとめている。
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