2015 Fiscal Year Research-status Report
シューベルトの歌曲創作に友人の思想が与えた影響――J. H. ゼンの草稿を中心に
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26770040
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Research Institution | Musashino Academia Musicae |
Principal Investigator |
堀 朋平 武蔵野音楽大学, 音楽学部, 講師 (10723398)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ロマン主義 / シューベルト / 親密性 / スイス |
Outline of Annual Research Achievements |
フランツ・シューベルトの音楽づくりに「友人」がどれだけ深い影響を与えたかを実証することを主題とする本研究にとって、2015年度の活動では、その集大成とも呼ぶべききわめて大きな成果を挙げることができた。 すなわち、単著『〈フランツ・シューベルト〉の誕生――喪失と再生のオデュッセイ』(法政大学出版局、2016年3月)を上梓することで、シューベルトの人生と音楽に、友人――なかんづくF.ショーバーとJ.マイアホーファーとJ.ゼン――が、継続的かつ本質的な次元で影響していたことを証明した。この証明は、音楽分析、歌詞の分析、歴史的および思想的背景の考察、ならびに友人たちの思想的交流といった、多岐にわたる観点から立体的になされた点で、本書は、日本国内のみならず世界的に見ても高い水準にある。 こうした主要な研究成果は、具体的な作品をめぐる個別研究と手を携えつつなされたものであり、今後もそうあるべきである。《未完成交響曲》の成立史・資料状況・楽曲の意味を論じた楽譜解説(音楽之友社、2015年9月)は、個別の楽曲研究における達成であり、今後の研究継続にとっても大きな道標となるはずである。 国外における資料調査・実地研修も、研究に新たな動機をもたらすために欠かせない。2015年夏は、昨年度のリンツ調査に続いて、スイスに赴き、当地の自然がシューベルトの音楽(とりわけクラリネットの表現)に与えた影響を、楽器や風景の観点から学んだ。加えてH.-J.ヒンリクセン教授のいるチューリヒ大学を訪れて刺激を受けることができた。同教授のモノグラフィー『フランツ・シューベルト』(改訂版2014年)の翻訳を企画中の申請者としては、こうした経験は望外のものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は当初、3年間をかけて完遂されるべきと見積もっていたが、集大成である単著の出版を実現させることができたため。またそれにとどまらず、今後の飛躍のための足場(上記参照)をいくつも得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、本研究の主題である「友人関係」に軸足を置きつつも、次年度以降の研究も視野に入れ、これまではあまり手を付けていなかった研究主題を広く模索するつもりで研究を継続する。具体的には、(1)オペラ創作における友人の影響、(2)歌曲における「鳥」の意味という二つの点を念頭に置きつつ、学会発表等を行っていく。
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Causes of Carryover |
2015年度に支出した謝金および物品費が、当初の計画よりも少額であったため、若干額が繰り越しとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度は、学生アルバイト等で、謝金を計画よりも多く使用する予定である。
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